妊娠が判明したとき、予期せぬ妊娠であったり、さまざまな事情により出産をためらうケースもあるでしょう。そのような状況で、まず頭をよぎるのは「中絶手術はいつまで可能なのか」という疑問かもしれません。日本における人工妊娠中絶には、法律で定められた週数制限があります。この週数によって、手術の方法、身体的・精神的な負担、そして費用が大きく変わってきます。
このページでは、中絶手術が可能な週数制限から、初期中絶と中期中絶の違い、それぞれの特徴、費用、そして手術に伴うリスクや注意点まで、中絶を検討する方が知るべき情報を網羅的に解説します。予期せぬ妊娠に直面し、不安な気持ちを抱えている方が、適切な情報に基づいて冷静な判断を下せるよう、正確かつ分かりやすく情報提供することを目的としています。一人で悩まず、まずはこの情報を参考に、早めに専門医に相談することを強くおすすめします。
中絶は何週まで?週数制限と対応について
日本における人工妊娠中絶手術は、母体保護法により実施できる期間が定められています。原則として、妊娠21週6日目までが中絶手術の最終的な期限とされています。これを超えた妊娠22週0日目以降は、胎児が母体外で生きる可能性が考慮されるため、人工妊娠中絶は法的に認められていません。
この週数制限の中で、中絶手術は大きく初期中絶と中期中絶の2つの期間に分けられます。それぞれの期間で、手術の方法、身体への負担、精神的な影響、そしてかかる費用が大きく異なります。
- 初期中絶: 妊娠11週6日までに行われる手術
- 中期中絶: 妊娠12週0日目から妊娠21週6日までに行われる手術
妊娠が判明したら、まず大切なのは「自分が今、何週目なのか」を正確に把握することです。最終月経の開始日を基準に概算できますが、医療機関での超音波検査によって正確な妊娠週数を確定することが不可欠です。
中絶手術を検討する上で最も重要なのは、できるだけ早い段階で医療機関を受診し、医師に相談することです。妊娠週数が進むにつれて、母体への負担は増大し、手術の選択肢も限られてきます。また、手術には予約や準備期間が必要な場合が多く、期限ギリギリでの受診では希望通りの対応ができない可能性も考えられます。
予期せぬ妊娠に戸惑いや不安を感じるのは当然のことです。しかし、その不安を抱えたまま時間を過ごすことが、結果的に選択肢を狭めてしまうことにもつながりかねません。信頼できる医療機関で専門医に相談し、ご自身の状況と希望に合った最善の選択をすることが大切です。
妊娠週数による中絶手術の違い
妊娠週数が進むにつれて、胎児の成長や母体の状態が変化するため、中絶手術の方法も大きく異なります。大きく分けて「初期中絶」と「中期中絶」があり、それぞれに特徴と留意点があります。
初期中絶(〜11週6日)の対応
初期中絶とは、妊娠11週6日までに行われる人工妊娠中絶手術を指します。この期間は、胎児が比較的小さく、子宮への影響も最小限に抑えられるため、一般的に身体的・精神的な負担が少ないとされています。
妊娠初期のメリットと特徴
妊娠初期に中絶手術を行うことには、いくつかのメリットがあります。
- 身体的負担の軽減:
- 手術方法: 主に「吸引法」または「掻爬(そうは)法」が用いられます。
- 吸引法: 子宮頚管を拡張した後、専用の器具で子宮内容物を吸い出す方法です。WHO(世界保健機関)が推奨しており、掻爬法に比べて子宮へのダメージが少ないとされています。
- 掻爬法: 子宮頚管を拡張した後、子宮内容物を器具で掻き出す方法です。近年では吸引法が主流となりつつありますが、医師の技術によっては掻爬法を選択する場合もあります。
- 回復の早さ: 手術自体が短時間で終わり(通常10〜15分程度)、術後の回復も比較的早い傾向にあります。多くの場合、日帰り手術が可能です。
- 出血や痛みの少なさ: 中期中絶に比べて、術後の出血量や痛みが少ないことが期待されます。
- 手術方法: 主に「吸引法」または「掻爬(そうは)法」が用いられます。
- 精神的負担の軽減:
胎児の成長が初期段階であるため、中期中絶に比べて精神的な負担が少ないと感じる方が多い傾向にあります。ただし、個人の感じ方には大きな差があります。
- 費用の抑制:
手術がシンプルであるため、中期中絶に比べて費用が安価に抑えられます。入院の必要がないため、入院費もかかりません。
- プライバシー保護のしやすさ:
日帰り手術が可能なため、周囲に知られることなく手術を終えられる可能性が高まります。
これらのメリットから、中絶を検討する際には、可能な限り妊娠初期に手術を行うことが推奨されます。
妊娠初期の注意点
妊娠初期の中絶手術にも、いくつか注意すべき点があります。
- 週数の正確な確定:
- 最終月経開始日から計算した週数と、超音波検査で確認した胎児の大きさに基づく週数には誤差が生じることがあります。正確な週数を確定し、手術可能な期間内であることを確認することが重要です。
- 特に、妊娠4週〜5週といったごく早期の場合、胎嚢(たいのう:胎児を包む袋)が小さすぎて確認できない、または子宮外妊娠の可能性も考慮されるため、一度の受診で手術が確定しないこともあります。数日〜1週間後に再受診して確認が必要となる場合があります。
- 手術前の検査:
手術前には、血液検査(貧血、感染症、血液型など)、超音波検査、心電図など、母体の健康状態を確認するための様々な検査が必要です。これらの結果によっては、すぐに手術ができない場合もあります。
- パートナーの同意:
母体保護法では、婚姻関係にある夫婦の場合、原則としてパートナー(夫)の同意が必要とされています。婚姻関係にない場合は、パートナーの同意なしで手術が可能な場合もありますが、医療機関によって対応が異なります。未成年者の場合は、親の同意が必要になることもあります。
- 医療機関の選択:
安全かつ適切な手術を受けるためには、信頼できる医療機関を選ぶことが非常に重要です。医師の経験や技術、設備、術後のケア体制などを事前に確認しましょう。
- 術後の合併症:
まれに、出血、感染症、子宮内容物の遺残、子宮穿孔などの合併症が起こる可能性があります。手術後は医師の指示に従い、安静に過ごし、定期的な術後検診を必ず受けることが大切です。
- 避妊の重要性:
中絶手術後、比較的早く排卵が再開するため、すぐに次の妊娠が可能になります。予期せぬ妊娠を繰り返さないためにも、手術後から適切な避妊方法について医師と相談し、実践することが極めて重要です。
これらの注意点を踏まえ、妊娠初期であっても、中絶手術は身体と心に大きな影響を与える医療行為であることを認識し、慎重に対応する必要があります。
中期中絶(12週〜21週6日)の対応
中期中絶とは、妊娠12週0日目から妊娠21週6日までに行われる人工妊娠中絶手術を指します。この期間は、胎児が成長しており、初期中絶とは異なり、分娩形式(陣痛を起こして出産する形式)での処置となります。母体への負担が大きく、より慎重な対応が求められます。
妊娠中期以降の対応方法
中期中絶は、初期中絶のように子宮内容物を吸引・掻爬する方法ではなく、㡷人工的に陣痛を誘発し、胎児を体外に出すという、出産に近い形で行われます。
- 手術前の検査と説明:
- 初期中絶と同様に、詳細な血液検査、超音波検査、心電図などが行われます。
- 手術方法、リスク、費用、術後の経過について、医師から時間をかけて詳細な説明を受け、十分に理解した上で同意書に署名します。
- 子宮頸管拡張処置:
分娩をスムーズにするため、手術前日または数日前から子宮頸管を徐々に広げる処置(ラミナリアやラミセルと呼ばれる器具の挿入など)が行われることが一般的です。これにより、子宮口を柔らかくし、陣痛が起こりやすい状態にします。
- 陣痛誘発:
子宮頸管が十分に拡張された後、陣痛促進剤を点滴や内服、または膣に挿入することで、人工的に陣痛を誘発します。
陣痛は自然分娩と同様に痛みを伴うため、痛みを軽減するための処置(鎮痛剤の投与など)が施されることもあります。 - 分娩と死産届の提出:
陣痛により胎児が娩出されます。この際、胎児は母体外では生命を維持できない状態ですが、生命としての形を成しているため、精神的な負担が大きくなることがあります。
中期中絶の場合、死産届の提出が義務付けられており、火葬・埋葬の対応が必要となります。病院や専門業者と相談し、適切に進める必要があります。 - 術後の子宮内容物確認と処置:
胎児の娩出後、胎盤などの子宮内容物が完全に排出されたかを確認するため、子宮内をきれにする処置(残っている場合は掻爬など)が行われることがあります。
- 入院期間:
分娩形式であるため、通常は数日間の入院が必要です。入院中は、母体の回復状況や合併症の有無を慎重に経過観察します。
妊娠中期以降の対応方法
中期中絶は、初期中絶のように子宮内容物を吸引・掻爬する方法ではなく、人工的に陣痛を誘発し、胎児を体外に出すという、出産に近い形で行われます。
- 手術前の検査と説明:
- 初期中絶と同様に、詳細な血液検査、超音波検査、心電図などが行われます。
- 手術方法、リスク、費用、術後の経過について、医師から時間をかけて詳細な説明を受け、十分に理解した上で同意書に署名します。
- 子宮頸管拡張処置:
分娩をスムーズにするため、手術前日または数日前から子宮頸管を徐々に広げる処置(ラミナリアやラミセルと呼ばれる器具の挿入など)が行われることが一般的です。これにより、子宮口を柔らかくし、陣痛が起こりやすい状態にします。
- 陣痛誘発:
子宮頸管が十分に拡張された後、陣痛促進剤を点滴や内服、または膣に挿入することで、人工的に陣痛を誘発します。
陣痛は自然分娩と同様に痛みを伴うため、痛みを軽減するための処置(鎮痛剤の投与など)が施されることもあります。 - 分娩と死産届の提出:
陣痛により胎児が娩出されます。この際、胎児は母体外では生命を維持できない状態ですが、生命としての形を成しているため、精神的な負担が大きくなることがあります。
中期中絶の場合、死産届の提出が義務付けられており、火葬・埋葬の対応が必要となります。病院や専門業者と相談し、適切に進める必要があります。 - 術後の子宮内容物確認と処置:
胎児の娩出後、胎盤などの子宮内容物が完全に排出されたかを確認するため、子宮内をきれにする処置(残っている場合は掻爬など)が行われることがあります。
- 入院期間:
分娩形式であるため、通常は数日間の入院が必要です。入院中は、母体の回復状況や合併症の有無を慎重に経過観察します。
中期中絶の費用について
中期中絶の費用は、初期中絶と比較して高額になる傾向があります。これは、手術がより複雑であり、入院期間や使用する薬剤の種類、術後のケアなどが初期中絶とは異なるためです。
| 項目 | 初期中絶(〜11週6日)の相場 | 中期中絶(12週〜21週6日)の相場 |
| :----------- | :--------------------------- | :------------------------------- |
| 手術費用 | 10万円〜20万円 | 30万円〜70万円以上 |
| 入院費用 | なし(日帰り) | 数万円〜数十万円(数日間の入院) |
| 術前検査費用 | 数千円〜数万円 | 数万円〜10万円 |
| 死産届・火葬 | なし | 数万円〜数十万円 |
| 合計 | 10万円〜25万円程度 | 40万円〜100万円以上 |
費用の変動要因:
* 妊娠週数: 週数が進むほど費用は高くなる傾向があります。
* 医療機関: クリニックや病院の規模、所在地域によって費用は異なります。
* 処置の内容: 子宮頸管拡張の有無、陣痛誘発の方法、麻酔の種類などによって変動します。
* 合併症の有無: 術後に合併症が発生した場合、追加で治療費がかかることがあります。
* 保険適用外: 人工妊娠中絶は、基本的に保険適用外の自由診療です。ただし、手術前の検査や術後の合併症治療の一部に保険が適用される場合もあります。
費用について不安がある場合は、事前に医療機関に詳細な見積もりを確認し、相談窓口を利用することも検討しましょう。
中期中絶の身体的・精神的負担
中期中絶は、初期中絶に比べて身体的・精神的な負担が大幅に大きくなります。
- 身体的負担:
- 陣痛と分娩: 自然分娩と同様に、陣痛による強い痛みや、胎児を娩出する際の身体的苦痛を伴います。
- 出血量: 出血量が多くなる傾向があり、貧血などのリスクも高まります。
- 回復期間: 入院が必要なことからもわかるように、身体の回復には時間がかかります。術後の子宮の収縮不全や感染症のリスクも高まります。
- 合併症のリスク: 子宮へのダメージが初期中絶よりも大きく、子宮内感染、出血多量、子宮穿孔、癒着などの合併症のリスクが増加します。将来の妊娠・出産への影響を懸念される方もいます。
- 精神的負担:
- 胎児の成長: 胎児が中期に入ると、身体の形成が進み、心拍もはっきりと確認できるため、生命としての認識が高まります。分娩形式で胎児を娩出することになるため、強い罪悪感や後悔の念、深い悲しみに苛まれることがあります。
- 出産体験: 陣痛を経験し、胎児を「出産」する過程は、通常の出産を経験するのと同じような身体的・精神的プロセスをたどるため、その後の心理的影響が大きい場合があります。
- 長期的な影響: 術後、抑うつ状態、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、不眠、食欲不振などの精神的な症状が長期間続くこともあります。
- 周囲の理解: パートナーや家族の理解とサポートが不可欠です。一人で抱え込まず、専門のカウンセリングやサポートグループの利用も積極的に検討しましょう。
中期中絶は、母体への影響が非常に大きいため、万が一の選択であっても、極めて慎重な判断と、十分な医療的・精神的サポートが必要です。妊娠が判明したら、できるだけ早期に医師に相談し、中期中絶を避けるための選択肢を検討することが何よりも重要です。
母体保護法による中絶手術の週数制限
日本において人工妊娠中絶手術が認められているのは、「母体保護法」という法律に基づいています。この法律は、母体の生命及び健康を保護することを目的としています。
母体保護法第14条において、人工妊娠中絶を行うことができるのは、以下のいずれかに該当する場合と定められています。
- 妊娠の継続又は分娩が、身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがある場合
- 暴行若しくは脅迫によって、又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠した場合
そして、この法律には、人工妊娠中絶ができる時期に関する明確な規定があります。それは、「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」に行われる場合に限る、というものです。この「胎児が母体外において生命を保続することのできない時期」が、医学的・法的に妊娠21週6日目までと解釈されています。
22週以降は中絶できない理由
妊娠22週0日目以降の人工妊娠中絶が認められないのは、医学の進歩により、この時期の胎児が母体外でも生命を維持できる可能性が極めて高まるためです。
- 胎児の生存可能性: 現代の新生児医療では、妊娠22週以降に生まれた超早産児でも、NICU(新生児集中治療室)などの高度な医療処置を受けることで生存できるケースが増えています。そのため、法律上、妊娠22週以降の胎児は「母体外で生命を保続できる可能性のある存在」と見なされ、人工的にその生命を絶つことは原則として認められていません。
- 倫理的・法的側面: この週数制限は、胎児の生命の尊厳と、母体の自己決定権とのバランスを考慮した上で定められています。胎児が一定の成長を遂げ、独立した生命として扱われるべき時期として、日本の法律では22週という区切りが設けられています。
- 例外的な場合: ただし、母体の生命が危ぶまれるなど、医学的に緊急を要するやむを得ない事態が生じた場合には、例外的に22週以降でも母体を救うための処置が認められることがあります。しかし、これは人工妊娠中絶とは区別され、あくまで母体救命のための医療行為として行われます。
このため、もし中絶を検討しているのであれば、妊娠22週の壁があることを強く認識し、後悔のない選択をするためにも、とにかく早期に医療機関へ相談することが何よりも大切です。期限を過ぎてしまってからでは、法的に中絶手術を受けることはできなくなり、母体にも大きな負担がかかることになります。
中絶手術が可能な時期とその他の関連情報
中絶手術を検討する上で、妊娠週数に関する疑問だけでなく、さまざまな不安や疑問を抱えることでしょう。ここでは、中絶の最適な時期や、特定の週数での対応、そして親への相談など、多くの人が疑問に思う点について解説します。
中絶のベストな時期はいつか
中絶手術の「ベストな時期」は、身体的、精神的、費用的な側面を総合的に考慮すると、可能な限り早い時期、つまり妊娠初期(〜11週6日)であると言えます。
- 身体的負担: 妊娠初期であれば、子宮へのダメージが少なく、回復も比較的早いため、母体への身体的負担が最も軽くなります。
- 精神的負担: 胎児の成長が進む前であるため、中期中絶に比べて精神的な苦痛が軽減される傾向にあります。
- 費用: 手術がシンプルであるため、中期中絶に比べて費用が安く済みます。
- 手術方法: 日帰りでの手術が可能であり、選択肢も多いため、より負担の少ない方法を選べる可能性が高まります。
しかし、「ベストな時期」はあくまで一般的な目安であり、個々の状況によって最善の選択は異なります。妊娠発覚直後は戸惑いや混乱の中で、すぐに決断を下すのが難しいこともあります。大切なのは、焦って結論を出すのではなく、まず医療機関を受診し、正確な妊娠週数や自身の健康状態、利用可能な選択肢について医師から説明を受けることです。その上で、パートナーや信頼できる人と十分に話し合い、ご自身が納得できる選択をすることが最も重要です。
妊娠初期に中絶手術をするメリット
妊娠初期(〜11週6日)に中絶手術を行うことには、中期中絶と比較して明確なメリットがあります。
- 身体的回復が早い: 手術時間が短く、子宮への侵襲も少ないため、術後の身体的回復が早いです。多くの場合、日帰りでの手術が可能で、日常生活への復帰も比較的スムーズです。
- 合併症のリスクが低い: 中期中絶に比べて、出血量が多くなったり、感染症を引き起こしたり、子宮にダメージを与えるなどの合併症のリスクが低いとされています。
- 費用が安価: 入院の必要がなく、手術も簡便であるため、中期中絶と比べて費用を大幅に抑えることができます。
- 精神的負担の軽減: 胎児の成長が進んでいない段階であるため、中期中絶のように分娩形式で胎児を娩出する精神的な苦痛を避けられることが多いです。
- プライバシーの確保: 日帰り手術であるため、周囲に知られることなく処置を終えることが比較的容易です。
これらのメリットを最大限に活かすためにも、予期せぬ妊娠が判明したら、できるだけ早く産婦人科を受診し、医師と相談することが推奨されます。
妊娠初期に手術する場合の注意点
妊娠初期の中絶手術にはメリットが多い一方で、いくつか注意すべき点もあります。
- 正確な週数確定の重要性: 初期中絶が可能とされるのは11週6日までですが、最終月経からの計算とエコー検査による週数には誤差が生じることがあります。正確な週数を確定し、期間内に手術を受けられるように計画することが重要です。
- 受診タイミングの検討: 妊娠ごく早期(妊娠4週〜5週)では、胎嚢が小さすぎて子宮内妊娠であることを確定できない場合があります。子宮外妊娠の可能性も排除できないため、適切な時期に再受診が必要となることがあります。あまりにも早すぎると手術が実施できないケースもあるため、医師の指示に従いましょう。
- パートナーの同意: 婚姻関係にある夫婦の場合、原則としてパートナー(夫)の同意書が必要です。未成年の場合は親の同意が必要となるケースが多いため、事前に医療機関に確認し、必要な手続きを進める準備をしましょう。
- 手術後の過ごし方: 手術後は安静を保ち、医師の指示に従うことが重要です。術後の検診も必ず受け、感染症やその他の合併症を早期に発見・治療できるようにしましょう。
- 避妊計画: 中絶手術後、すぐに次の排卵が起こり、妊娠する可能性があります。望まない妊娠を繰り返さないために、手術後から適切な避妊方法について医師と相談し、計画的に実践することが不可欠です。
これらの注意点を踏まえ、妊娠初期であっても、中絶手術は重要な医療行為であり、十分な情報収集と準備、そして医師との連携が求められます。
妊娠4週での中絶手術について
妊娠4週目は、最終月経開始日から数えて4週間が経過した非常に早い時期です。この時期は、一般的に妊娠検査薬で陽性反応が出始めるか、まだ出たばかりの段階です。中絶手術を検討するにあたり、妊娠4週での対応には特有の考慮事項があります。
- 胎嚢の確認: 妊娠4週では、超音波検査で胎嚢(たいのう:胎児を包む袋)が確認できるかどうか、ぎりぎりのタイミングであることが多いです。胎嚢が確認できない場合、正確な妊娠週数の判断が難しく、子宮外妊娠の可能性も排除できません。
- 手術ができない可能性: 胎嚢が確認できない、または小さすぎる場合、安全かつ確実に中絶手術を行うことが困難です。このため、多くの医療機関では、妊娠5週〜6週以降、胎嚢や心拍が確認できてから手術を行うことを推奨しています。
- 再受診の必要性: 妊娠4週で受診した場合、医師は数日〜1週間後に再受診を指示し、胎嚢の成長や心拍の確認を行います。これは、子宮内妊娠であることを確定し、手術の安全性を確保するために不可欠なステップです。
- 早期相談の重要性: 妊娠4週という早期に妊娠に気づき、中絶を検討している場合、その判断は非常に迅速であると言えます。この早期相談は、結果的に初期中絶を選択できる可能性を高めるためにも重要です。焦らず、医師の指示に従い、適切なタイミングで安全な手術計画を立てましょう。
妊娠4週という早い段階であっても、不安を感じたらすぐに医療機関に相談することが大切です。医師は、あなたの身体と心の状態を考慮し、最も適切な対応方法を提案してくれます。
中絶手術は親に内緒でできるか
未成年者が中絶手術を検討する際、「親に内緒で手術できるか」という問題は非常にデリケートであり、多くの不安を伴います。日本の医療機関では、未成年者の人工妊娠中絶手術に関して、原則として保護者(親権者)の同意書が必要とされています。
原則としての保護者の同意:
- 母体保護法では、未成年者の手術に関する具体的な年齢制限は明記されていませんが、多くの医療機関では、民法の定める成人年齢(18歳)を基準としています。
- 安全な医療行為の実施、術後の管理、そして精神的なサポートの観点から、保護者の同意を必須とするのが一般的です。これは、未成年者が十分な判断能力を有していないとみなされる可能性や、手術後の心身のケアを保護者が行うことが望ましいという考えに基づいています。
同意が難しい場合の対応:
しかし、以下のような特別な事情がある場合は、保護者の同意なしで手術が認められることもあります。
- 虐待や家庭内暴力: 親からの虐待を受けている、または親が加害者である場合。
- 保護者との連絡が困難: 親が遠方に住んでいる、連絡が取れない、行方不明であるなど。
- 保護者からの同意が得られない: 理由なく同意を拒否される、または同意を求めることで本人に危険が及ぶ可能性がある場合。
- 医師の判断: 医師が、本人の成熟度や事情を考慮し、保護者の同意なしでも手術を行うことが本人の最善の利益となると判断した場合。
具体的な対応方法:
- まずは医療機関に相談: 親に言えない事情がある場合でも、まずは一人で悩まずに産婦人科を受診し、医師や医療ソーシャルワーカーに正直に状況を話しましょう。多くの医療機関には、未成年者のデリケートな問題に対応するための相談体制があります。
- 相談窓口の利用: 各自治体やNPO法人などが運営する、性に関する相談窓口や緊急相談ダイヤルなども利用できます。これらの場所では、匿名で相談ができ、適切な医療機関やサポート体制に関する情報を提供してくれます。
- 法的支援の検討: 状況によっては、弁護士など法的支援の専門家に相談することも有効な場合があります。
親に内緒で手術を進めることは非常に難しい場合が多いですが、決して不可能ではありません。しかし、そのためには、専門家のサポートや医療機関との綿密な連携が不可欠です。何よりもまず、勇気を出して誰かに相談することから始めてください。
中絶に関するよくある質問
中絶手術に関する不安や疑問は多岐にわたります。ここでは、特に多くの人が抱くであろう質問とその回答について解説します。
一度中絶すると妊娠しにくくなるか
「一度中絶手術をすると、将来妊娠しにくくなるのではないか」という不安は、中絶を検討する多くの女性が抱く大きな懸念の一つです。結論から言うと、適切な医療機関で安全な手術を受け、術後のケアをしっかり行えば、一度の中絶手術がその後の妊娠に直接的な影響を与える可能性は低いとされています。
しかし、これは「合併症が一切ない場合」を前提とした話であり、ごくまれにではありますが、以下のような状況で将来の妊娠に影響を与える可能性もゼロではありません。
- 子宮内感染症:
- 手術後、子宮内に細菌が侵入し、感染症を引き起こすことがあります。重度の感染症は、卵管炎や骨盤内炎症性疾患(PID)へと進行し、卵管の癒着や閉塞を引き起こす可能性があります。これが、不妊の原因となることがあります。
- 適切な抗生剤の服用や、術後の安静、清潔を保つことで感染症のリスクは最小限に抑えられます。
- 子宮内癒着(アッシャーマン症候群):
- 子宮内を掻爬する際、子宮内膜が過度に損傷されることで、子宮内壁が癒着を起こすことがあります。これにより、子宮の形が変化したり、内膜が薄くなったりして、受精卵の着床が困難になることがあります。
- 特に、繰り返し中絶手術を受ける場合や、不適切な手技による手術を受けた場合にリスクが高まると言われています。
- 現代の吸引法による初期中絶では、子宮内膜へのダメージが比較的少ないため、このリスクは低減されています。
- 子宮頚管無力症:
手術時に子宮頚管を拡張する際、まれに子宮頚管がダメージを受け、弱くなることがあります。これにより、将来妊娠した際に、妊娠中期での流産や早産の原因となる「子宮頚管無力症」を発症するリスクが生じる可能性も指摘されています。
妊娠しにくさへの影響を最小限にするために:
- 信頼できる医療機関を選ぶ: 経験豊富な医師と適切な設備が整った医療機関で手術を受けることが最も重要です。
- 初期中絶を選択する: 可能であれば、身体的負担の少ない妊娠初期に手術を受けることを検討しましょう。
- 術後ケアの徹底: 医師の指示に従い、抗生剤を服用し、安静を保ち、清潔を心がけることが不可欠です。術後の定期検診も必ず受けましょう。
- 異常を感じたらすぐに受診: 術後に発熱、腹痛、多量出血などの異常があった場合は、すぐに医療機関を受診してください。
多くの研究では、一度の中絶手術が将来の不妊に直接結びつくという明確なエビデンスは示されていません。しかし、合併症のリスクはゼロではないため、中絶手術は安易に繰り返すべきではありません。術後は避妊を徹底し、望まない妊娠を避けるための計画をしっかりと立てることが大切です。
## 専門家監修
監修医師名: [監修医師名] 所属: [所属機関名] 専門分野: [専門分野] 一次情報へのリンク: [関連する専門機関のウェブサイトなど]
免責事項:
本記事は、人工妊娠中絶に関する一般的な情報提供を目的としています。医療に関する判断は、個々の状況によって大きく異なるため、必ず医師の診察を受け、ご自身の状況に合わせた専門的なアドバイスを受けるようにしてください。本記事の情報のみに基づいて自己判断で行動することはお控えください。