避妊インプラントとは?3年間効果が続く!メリット・デメリットを解説

避妊インプラントは、上腕に埋め込むことで長期間にわたり高い避妊効果を発揮する避妊方法です。一度挿入すれば数年間効果が持続するため、毎日の服用や管理の手間が不要となり、世界中で多くの女性に選ばれています。しかし、日本ではまだ医薬品医療機器法上の承認を受けていないため、その効果や費用、安全性、日本での現状について正確な情報を得ることは容易ではありません。

この記事では、避妊インプラントの詳しい仕組みや特徴、具体的なメリットとデメリット、気になる費用相場や日本での承認状況、さらにはよくある疑問まで、多角的に解説します。避妊インプラントに関心のある方が、ご自身の選択肢として検討するための基礎知識を深め、より安全で適切な判断ができるよう、最新のエビデンスに基づいた情報を提供します。

避妊インプラント|効果・特徴・費用・日本での状況を解説

避妊インプラントは、現代における避妊法の選択肢の中でも特に注目されている、長期作用型避妊法(LARC: Long-Acting Reversible Contraception)の一つです。腕に埋め込む小さなデバイスが、継続的にホルモンを放出し、高い避妊効果を維持します。しかし、日本ではまだ一般的ではないため、その全容を理解している方は少ないかもしれません。

本記事では、避妊インプラントの基本情報から、その優れた効果、日常生活にもたらすメリット・デメリット、気になる費用感、そして日本国内での現状について詳しく掘り下げていきます。避妊インプラントがなぜ「効果がすごい」と言われるのか、また、日本で未承認であることの意味とその背景も解説し、この避妊法を検討している方々が、より深い知識を持って選択できるようサポートします。

避妊インプラントとは?仕組みと特徴

避妊インプラントは、低用量ピルや子宮内避妊器具(IUD/IUS)と並び、現代の主要な避妊方法として多くの国で採用されています。特に、その高い避妊効果と長期的な持続性から、計画的な避妊を求める女性にとって非常に魅力的な選択肢となっています。ここでは、避妊インプラントが具体的にどのようなメカニズムで避妊効果を発揮するのか、そして他の避妊法と比較してどのような特徴を持つのかを詳しく見ていきましょう。

避妊インプラントの仕組み

避妊インプラントの仕組みは、プロゲステロンという女性ホルモンの一種を継続的に体内に放出することで、妊娠を防ぐというものです。具体的には、以下のような複数のメカニズムで避妊効果を発揮します。

  1. 排卵の抑制:
    避妊インプラントから放出されるプロゲステロン(主にエトノゲストレルという合成プロゲステロン)は、脳の視床下部-下垂体-卵巣系に作用し、排卵を促すホルモン(LHサージ)の分泌を抑制します。これにより、卵巣からの排卵がほとんど起こらなくなり、受精の機会を根本から絶ちます。この排卵抑制作用が、避妊インプラントの主要な避妊メカニズムです。
  2. 子宮頸管粘液の変化:
    プロゲステロンは、子宮頸部から分泌される粘液の質を変化させます。通常、排卵期には精子が子宮内へ侵入しやすいように粘液がサラサラになりますが、プロゲステロンの影響下では粘液が濃く、粘り気が強くなります。これにより、精子が子宮内へと進入しにくくなり、卵子との出会いを妨げます。
  3. 子宮内膜の変化:
    プロゲステロンは、子宮内膜を薄く変化させ、受精卵が着床しにくい環境を作ります。もし排卵がごく稀に起こり、受精に至ったとしても、着床が阻害されることで妊娠が成立しにくくなります。

これらの作用は、インプラントが皮下(通常は上腕の内側)に挿入されている間、絶え間なく持続します。デバイス自体は非常に小さく、柔軟なプラスチック製の棒状(マッチ棒程度のサイズ)で、一度挿入すれば、製品にもよりますが約3年から5年間、これらの避妊効果を維持することが可能です。除去すれば、数週間から数ヶ月で排卵が再開し、元の生殖能力に戻るとされています。

避妊インプラントの特徴

避妊インプラントは、その独自の仕組みから他の避妊法にはないいくつかの際立った特徴を持っています。これらの特徴が、避妊インプラントが世界中で評価される理由となっています。

  1. 圧倒的な避妊効果:
    避妊インプラントは、適切に挿入された場合、その避妊成功率は99%以上と非常に高く、最も効果的な避妊法の一つとして知られています。これは、毎日薬を服用する手間がなく、使用者自身のミスが介入する余地が少ないためです。
  2. 長期的な避妊持続期間:
    一度挿入すれば、製品にもよりますが3年から5年間、避妊効果が持続します。これにより、毎日のピル服用や、数ヶ月ごとの避妊具交換といった煩わしさから解放され、長期的な視点で避妊計画を立てることが可能になります。多忙な方や、服用忘れの心配がある方にとって大きなメリットです。
  3. 高い利便性と匿名性:
    腕の皮膚の下に埋め込まれるため、普段の生活で意識する必要がほとんどありません。また、他人に避妊していることを知られる心配が少ないという匿名性も、一部の利用者にとっては重要な特徴となります。性行為の度に準備する必要がなく、自然な性生活を送ることができます。
  4. リバーシブル(可逆的)な避妊法:
    避妊インプラントは、妊娠を望む時期が来れば、簡単な外科的処置によって除去することができます。除去後、比較的速やかに元の生殖能力に戻り、妊娠が可能になります。これにより、将来のライフプランに合わせて柔軟に避妊を管理することができます。
  5. エストロゲンフリー:
    避妊インプラントは、プロゲステロンのみを放出するため、エストロゲンを含みません。これにより、エストロゲンを服用できない既往歴を持つ女性(例:血栓症のリスクが高い、偏頭痛があるなど)でも使用できる可能性があります。ただし、適用には医師の判断が必要です。
  6. 生理に関する副効用:
    プロゲステロンの作用により、多くの使用者で月経量が減少したり、生理痛が軽減されたりすることが報告されています。中には無月経になるケースもありますが、これは医学的には問題ないとされており、生理の煩わしさから解放されるメリットとして捉える人もいます。

これらの特徴を総合すると、避妊インプラントは非常に高い避妊効果を求める方、長期的な避妊を希望する方、そして毎日の避妊管理を簡素化したい方にとって、非常に優れた選択肢と言えるでしょう。

避妊インプラントのメリット・デメリット

避妊インプラントは多くの利点を持つ一方で、他の避妊法と同様に、いくつかのデメリットや副作用も存在します。避妊方法を選ぶ際には、これらの両面を十分に理解し、ご自身のライフスタイルや健康状態に合わせて検討することが重要です。

メリット

避妊インプラントの主要なメリットは以下の通りです。

  1. 非常に高い避妊効果
    正しく挿入された場合、避妊成功率は99%以上と、現在の避妊法の中でも最も高い部類に属します。これは、使用者による誤用や忘れが原因となる避妊失敗のリスクがほとんどないためです。
  2. 長期的な避妊期間
    一度の挿入で3年~5年間(製品による)効果が持続するため、毎日の服用や、性行為ごとの準備が不要になります。これにより、避妊に対するストレスや手間が大幅に軽減されます。
  3. 服用忘れの心配がない
    低用量ピルのように毎日決まった時間に服用する必要がないため、飲み忘れによる避妊失敗のリスクがありません。多忙な方や不規則な生活を送る方にとって特に大きな利点です。
  4. 性行為の妨げにならない
    挿入後は、性行為の度に避妊を意識する必要がありません。これにより、性生活をより自然で中断なく楽しむことができます。
  5. エストロゲンを含まない
    エストロゲンを含まないため、エストロゲンが禁忌とされる状態(例:血栓症の既往、重度の偏頭痛、授乳中など)の女性でも使用できる可能性があります。ただし、最終的な判断は医師が行います。
  6. 月経量の減少や生理痛の軽減
    プロゲステロンの作用により、子宮内膜が薄くなるため、月経量が減少したり、生理痛が和らぐ効果が期待できます。中には無月経になる方もおり、生理の煩わしさから解放されると感じる人もいます。貧血に悩む女性にとっては、月経量の減少は大きな恩恵となりえます。
  7. いつでも除去可能で可逆性がある
    妊娠を望む時期が来たら、いつでも簡単な外科的処置でインプラントを除去できます。除去後は比較的速やかに元の排卵機能が回復し、妊娠が可能になります。ライフプランの変更にも柔軟に対応できる点が魅力です。

デメリット・副作用

避妊インプラントには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットや副作用も理解しておく必要があります。これらは個人差があり、全ての利用者に現れるわけではありません。

  1. 不正出血
    最も一般的な副作用として、予測できない不正出血が挙げられます。挿入後数ヶ月間は特に多く見られますが、徐々に落ち着くことが多いです。しかし、中には長期にわたり不正出血が続くケースもあります。これは、子宮内膜が薄くなることによる内膜の不安定性や、プロゲステロンによるホルモンバランスの変化が原因とされています。
  2. 月経不順・無月経
    不正出血とは別に、月経周期が不規則になったり、完全に月経が停止する無月経となることがあります。生理がないことをメリットと感じる方もいますが、月経周期の変化に不安を感じる方もいます。
  3. ホルモン関連の副作用
    プロゲステロンの影響による全身的な副作用として、以下のようなものが報告されています。
    • 頭痛: 比較的よく見られる副作用です。
    • 吐き気: 一時的に経験することがあります。
    • 体重増加: 全ての利用者に起こるわけではありませんが、一部で体重増加を訴えるケースがあります。これは食欲増進や体液貯留によるものと考えられます。
    • 乳房の張り・痛み: ホルモンバランスの変化によるものです。
    • にきび(ざ瘡): ホルモンバランスの変化により、一時的に悪化する可能性があります。
    • 気分の変動(うつ症状を含む): プロゲステロンが中枢神経系に作用することで、気分の落ち込みやイライラ感を感じることがあります。
  4. 挿入・除去時のリスク
    インプラントの挿入・除去は、局所麻酔下で行われる小外科処置です。
    • 痛みや内出血: 挿入・除去時に、局所麻酔の注射や処置自体に伴う痛み、その後の内出血や腫れが起こることがあります。
    • 感染症: 稀に、挿入部位の感染症が発生することがあります。
    • 神経や血管の損傷: 非常に稀ですが、挿入・除去時に近くの神経や血管を損傷するリスクがあります。
    • 瘢痕(傷跡): 挿入・除去部位に小さな傷跡が残る可能性があります。
    • 除去困難: 稀にインプラントが深すぎたり、組織に癒着したりして、除去が困難になるケースがあります。
  5. 性感染症の予防効果はない
    避妊インプラントは、あくまで妊娠を防ぐためのものです。HIVやクラミジア、淋病などの性感染症(STI/STD)を防ぐ効果はありません。性感染症のリスクがある場合は、コンドームの併用が推奨されます。
  6. 日本での未承認状況による課題
    日本ではまだ医薬品医療機器等法上の承認を受けていないため、以下の課題があります。
    • 保険適用外: 自由診療となり、費用が高額になる傾向があります。
    • 提供施設が限られる: 個人輸入で提供している一部のクリニックでしか受けられません。
    • 情報不足: 日本語での情報が少なく、信頼できる情報を得るのが難しい場合があります。
    • 万が一のトラブル時の保障: 海外製品であるため、国内の医薬品副作用被害救済制度の対象外となる可能性があります。

これらのメリットとデメリットを比較検討し、ご自身の体質やライフスタイル、将来の計画に最も適した避妊方法を選択することが大切です。決定する前には必ず専門の医師と十分に相談し、納得した上で治療を受けるようにしましょう。

避妊インプラントの費用と保険適用

避妊インプラントは、その高い効果と利便性から世界中で普及していますが、日本ではまだ医薬品医療機器等法上の承認を得ていません。この「未承認」という点が、費用や保険適用に大きな影響を与えています。ここでは、日本および承認国での費用相場、そして保険適用外となる理由について詳しく解説します。

日本での費用相場

日本では避妊インプラントが未承認であるため、公的な医療保険が適用されず、全額自己負担となる自由診療での提供となります。そのため、費用は提供するクリニックによって大きく異なり、一般的な相場を特定するのは難しいのが現状です。

しかし、個人輸入された避妊インプラントを扱っている一部のクリニックでは、以下の費用がかかることが想定されます。

  • インプラント本体費用: 海外から個人輸入するため、為替レートや流通経路によって変動しますが、数万円程度が目安となるでしょう。
  • 挿入手術費用: 医師の診察料、局所麻酔料、手技料などが含まれ、5万円~10万円以上かかる場合があります。
  • 除去手術費用: 挿入時と同様に診察料や手技料がかかり、数万円程度が目安となります。挿入時よりも除去の方がやや高くなる傾向があるクリニックもあります。
  • 初診・再診料: 診察ごとに費用が発生します。
  • 検査費用: 挿入前の問診や検査(血液検査、超音波検査など)にも費用がかかります。

これらを合わせると、避妊インプラントの挿入にかかる総額は、一般的に10万円~20万円程度となることが多いようです。さらに、数年後の除去にも別途費用がかかることを考慮する必要があります。

他の避妊法と比較すると、初期費用は高額に感じるかもしれませんが、3年から5年間という長期間の効果を考えれば、1年あたりの費用に換算すると、毎日服用する低用量ピルと大きな差がない場合もあります。

避妊方法 初期費用(目安) 年間費用(目安) 特徴
避妊インプラント 10万~20万円 2万~7万円(3-5年効果) 非常に高効果、長期持続、挿入・除去手術必要
低用量ピル 数千円 1万~3万円 毎日服用、比較的安価、生理調整効果
IUS(ミレーナなど) 5万~10万円 1万~2万円(5年効果) 高効果、長期持続、子宮内挿入
コンドーム 数百円~数千円 数千円~数万円 安価、性感染症予防効果あり、毎回使用必要

※IUSは日本では特定の条件下で保険適用になる場合がありますが、避妊目的は自由診療です。上記は自由診療の場合の目安です。

アメリカでの費用と保険適用

避妊インプラントが承認されているアメリカでは、日本とは費用体系が大きく異なります。アメリカでは、避妊インプラント(代表的な製品はNEXPLANON)は広く普及しており、多くの医療保険が適用されます。

  • 総費用: 保険適用前の総費用は、製品代、挿入手術、診察料を含めると約800ドル~1,300ドル(約12万円~20万円、為替レートによる)が目安とされています。
  • 保険適用: アメリカでは、オバマケア(Patient Protection and Affordable Care Act)の規定により、多くの医療保険プランで避妊方法がカバーされています。これにより、避妊インプラントも自己負担なし、または非常に少ない自己負担額で利用できるケースが多くあります。これは、初期費用が高額な避妊インプラントの普及を後押しする大きな要因となっています。
  • 長期的な費用対効果: 保険が適用される場合、使用者にとってはほとんど費用負担なく、長期間にわたる高い避妊効果を得られるため、非常に経済的でメリットが大きいと認識されています。

このように、承認国であるか否かで、費用の負担は劇的に変わることを理解しておく必要があります。

保険適用外になる理由

避妊インプラントが日本で保険適用外になるのは、「日本の医薬品医療機器等法(薬機法)上の承認を得ていない医薬品(医療機器)」であるためです。

日本の医療保険制度は、厚生労働大臣が承認し、公的医療保険の適用が認められた医薬品や医療機器、治療行為にのみ適用されます。承認されていない製品や治療は、原則として自由診療となり、費用は全額自己負担となります。

避妊インプラントが日本で承認されていない主な理由は、以下の点が挙げられます。

  • 承認申請の有無: 製品の製造販売業者や海外メーカーが、日本での承認申請を行っていない、または申請の準備段階にある、もしくは過去に申請したが承認に至らなかった、といった状況が考えられます。承認申請には、日本の患者を対象とした臨床試験の実施、膨大な安全性・有効性データの提出、厳格な審査プロセスが必要となり、多大な時間と費用がかかります。
  • 既存の避妊法の存在: 日本には既に低用量ピルやIUS/IUD、コンドームといった多様な避妊法が普及しており、これらと比較して避妊インプラントのニーズや必要性が、優先的に承認されるほど高いと判断されていない可能性もあります。
  • 文化的な背景やニーズの差: 他国に比べて長期作用型避妊法への意識が低い、あるいは既存の避妊法で十分と考える医療従事者や一般市民が多いといった文化的な背景も、承認プロセスに影響を与えている可能性も考えられます。

いずれにしても、日本で避妊インプラントが保険適用されるためには、まず薬機法上の承認を得る必要があります。これにより、医療機関での安定供給や、万が一の副作用が発生した場合の医薬品副作用被害救済制度の対象となるなど、使用者の安全性がより確保されることになります。現状では、未承認薬であることのリスクを十分に理解した上で、慎重に検討することが求められます。

避妊インプラントの安全性と承認状況

避妊インプラントを検討する上で、その安全性と、日本を含む世界各国での承認状況は非常に重要な情報です。特に日本では未承認であるため、海外での実績と日本の状況を正しく理解する必要があります。

日本での承認状況

現状、避妊インプラントは、日本国内において医薬品医療機器等法(薬機法)上の承認を受けていません。 これは、避妊インプラントの製造販売が許可されていないことを意味します。そのため、日本の医療機関で避妊インプラントを入手・挿入できるのは、医師が個人的に海外から輸入する「医師個人輸入」という形で提供されている場合に限られます。

医師個人輸入による医療行為は、以下の点で注意が必要です。

  • 保険適用外: 前述の通り、公的医療保険の対象外となり、費用は全額自己負担となります。
  • 供給の不安定さ: 国内での流通ルートが確立されていないため、入手が困難になったり、価格が変動したりする可能性があります。
  • 情報不足: 日本語での添付文書や患者向け説明書が存在しない場合があり、医師が海外の情報を翻訳して説明することになります。
  • 医薬品副作用被害救済制度の対象外: 未承認薬であるため、万が一重篤な副作用が発生した場合でも、国内の医薬品副作用被害救済制度による補償を受けることができません。すべてのリスクを自己責任で負うことになります。

これらのリスクを考慮すると、日本で避妊インプラントを検討する際は、医師が十分な知識と経験を持ち、インフォームドコンセント(十分な説明と同意)を徹底しているクリニックを選ぶことが極めて重要です。また、承認状況については将来的に変更される可能性もあるため、常に最新の情報を確認するようにしましょう。

アメリカ(FDA)での承認

避妊インプラントは、世界中で広く使用されており、特にアメリカでは主要な避妊法の一つとして確立されています。アメリカ食品医薬品局(FDA: Food and Drug Administration)は、代表的な避妊インプラントである「NEXPLANON(ネクスプラノン)」を承認しています。

NEXPLANONは、エトノゲストレル(合成プロゲステロンの一種)を放出する細い棒状のインプラントで、最長3年間避妊効果が持続します。FDAは、その有効性と安全性を厳格に評価した上で承認しており、承認後も市販後調査を通じて安全性データを継続的に監視しています。

FDAの承認は、以下の点でその安全性を裏付けています。

  • 厳格な臨床試験: 承認前には、数千人規模の臨床試験が行われ、その有効性(避妊率)と安全性(副作用プロファイル)が詳細に評価されます。
  • 国際的な普及: NEXPLANONはアメリカだけでなく、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリア、アジアなど、世界60カ国以上で承認され、数百万人の女性に使用されています。この国際的な普及と長年の使用実績は、その安全性の信頼性を高める要因となっています。
  • 高い避妊効果と安全性データ: FDAやその他の国際的な保健機関は、NEXPLANONを最も効果的な避妊法の一つとして推奨しており、適切な使用の下での安全性プロファイルが確立されています。

NEXPLANONのような避妊インプラントは、FDAの承認基準を満たし、世界中でその有効性と安全性が認められている避妊法であると言えます。しかし、それぞれの国や地域で承認されるためには、その国の法規制や医療制度に合わせた手続きが必要であり、日本での承認プロセスが進行していない、あるいは完了していないという状況を理解しておくことが大切です。海外での豊富な使用実績は参考になりますが、日本の医療環境における未承認薬であることのリスクは依然として存在します。

避妊インプラントが可能な場所

避妊インプラントは日本では未承認の避妊法であるため、どの医療機関でも受けられるわけではありません。現在、避妊インプラントの挿入・除去が可能な場所は、限られた「自由診療」を行っている婦人科クリニックや美容クリニックが中心となります。

このようなクリニックは、医師が個人で海外から避妊インプラントを輸入し、患者の同意を得た上で提供しています。そのため、以下の点に注意してクリニックを選ぶ必要があります。

  1. 「避妊インプラント」の取り扱いがあるか確認する
    まず、受診を検討しているクリニックのウェブサイトを確認するか、直接問い合わせて、避妊インプラント(NEXPLANONなど)の挿入・除去に対応しているかを確認してください。全ての自由診療クリニックが扱っているわけではありません。
  2. 医師の経験と専門性
    インプラントの挿入・除去は、局所麻酔下で行われる小外科処置です。経験豊富な医師が行うことで、合併症のリスクを低減できます。避妊インプラントの知識が豊富で、処置実績が多い医師を選ぶことが重要です。質問に対して明確で納得のいく説明をしてくれるかどうかも判断材料になります。
  3. 十分なインフォームドコンセント
    未承認薬であることのリスク、予想される副作用、挿入・除去の手順、費用、万が一の合併症時の対応などについて、納得できるまで十分に説明をしてくれるクリニックを選びましょう。日本語の資料や海外での承認状況に関する情報提供も重要です。
  4. アフターケア体制
    挿入後の定期的なチェックや、不正出血などの副作用が出た場合の相談、将来的な除去まで、一貫したアフターケア体制が整っているかどうかも確認してください。特に、除去は挿入よりも技術を要する場合があります。
  5. 費用体系の明確さ
    自由診療であるため、クリニックによって費用は大きく異なります。挿入費用、除去費用、診察料、検査費用など、全ての費用について事前に明確な説明があり、納得できる価格設定であるかを確認しましょう。

クリニックを探す際の注意点:

  • インターネットで「避妊インプラント 日本」「NEXPLANON 挿入」などのキーワードで検索すると、取り扱いのあるクリニックが見つかることがあります。
  • ただし、検索結果に出てきた全てのクリニックが優良であるとは限りません。必ず複数のクリニックの情報を比較検討し、評判や口コミも参考にしながら、慎重に選びましょう。
  • 不明な点や不安な点は、カウンセリング時に遠慮なく質問し、医師との信頼関係を築けるクリニックを選ぶことが大切です。

日本ではまだ承認されていないからこそ、情報の収集とクリニック選びには、より一層の注意と時間をかける必要があります。

よくある質問

避妊インプラントに関して、多くの人が抱く疑問点をまとめました。ここでは、特に頻繁に寄せられる質問とその回答を詳しく解説します。

避妊インプラントは生理を止める効果がある?

避妊インプラントは、完全に生理を止めることを目的としたものではありませんが、多くの使用者で月経量の減少や生理痛の軽減が見られ、中には無月経(生理が来なくなること)になる方もいます。

この現象は、避妊インプラントから放出されるプロゲステロン(エトノゲストレル)が、子宮内膜の増殖を抑制し、内膜を非常に薄い状態に保つことによって起こります。子宮内膜が薄くなると、剥がれ落ちる量が少なくなるため、月経量が減少したり、生理が来なくなったりするのです。

無月経になることについて:
医学的には、避妊インプラント使用中に生理が来なくても、それが健康上の問題となることはほとんどありません。むしろ、生理の煩わしさ(生理痛、月経量過多、PMSなど)から解放されることをメリットと感じる利用者も少なくありません。ただし、急な無月経に不安を感じる場合は、医師に相談することが重要です。無月経が必ずしも全ての利用者に出るわけではなく、不規則な不正出血が続く方もいれば、比較的規則的な軽い月経が続く方もいます。個人差が大きいことを理解しておきましょう。

避妊インプラント除去後の影響は?

避妊インプラントは「リバーシブル(可逆的)」な避妊法であり、除去すれば比較的速やかに元の生殖能力に戻り、妊娠が可能になります。

  • 排卵の回復: インプラントを除去すると、体内のプロゲステロンのレベルが低下し、数週間から数ヶ月以内に排卵が再開します。多くの女性は、除去後1ヶ月以内に最初の月経を経験し、その後通常の月経周期に戻るとされています。
  • 妊娠の可能性: 排卵が再開すれば、すぐに妊娠する可能性があります。除去後、平均して約1年以内に80%以上の女性が妊娠に至るとの報告もあります。
  • 除去時の処置: 除去も挿入と同様に、局所麻酔下で行われる小外科処置です。挿入部位の皮膚を小さく切開し、インプラントを取り出します。挿入時よりも除去の方がやや時間がかかったり、技術を要したりする場合があります。稀にインプラントが深部に入り込んだり、組織に癒着したりして、除去が困難になるケースもあります。
  • 除去後の傷跡: 除去部位には、小さな切開痕が残りますが、通常は目立たない程度です。
  • ホルモンバランス: 除去後、一時的にホルモンバランスが不安定になり、月経不順や軽度の副作用(頭痛、気分の変動など)を感じる方もいますが、ほとんどの場合、時間が経てば自然に元の状態に戻ります。

妊娠を計画している場合は、計画的にインプラントを除去し、医師と相談しながら準備を進めることが推奨されます。

避妊インプラントは妊娠中に使用できる?

避妊インプラントは、妊娠中の女性には使用できません。 そもそも避妊を目的としたデバイスであるため、既に妊娠している状態での挿入は禁忌とされています。

  • 挿入前の確認: 避妊インプラントを挿入する前には、必ず医師による妊娠検査が行われます。妊娠していないことを確認した上で、挿入が実施されます。
  • もし挿入後に妊娠が判明した場合: 避妊インプラントの避妊成功率は非常に高いですが、100%ではありません。万が一、インプラント挿入後に妊娠が判明した場合でも、既存のデータからはインプラントが胎児に悪影響を及ぼすという明確な証拠は示されていません。しかし、そのような状況になった場合は、直ちに医師に相談し、インプラントの除去について検討する必要があります。
  • 授乳中の使用: 避妊インプラントはプロゲステロンのみを放出するため、エストロゲンを含む避妊法と比較して、授乳中の女性にも比較的安全に使用できるとされています。ただし、微量のホルモンが母乳を介して乳児に移行する可能性はあります。授乳中に避妊インプラントの使用を検討する場合は、必ず医師と十分に相談し、リスクとベネフィットを慎重に評価することが重要です。

避妊インプラントは、妊娠を確実に避けたい期間に、計画的に使用するための避妊法であることを理解しておきましょう。

【まとめ】避妊インプラントは魅力的だが、日本での情報収集と検討は慎重に

避妊インプラントは、一度腕に埋め込めば数年間にわたり高い避妊効果を持続し、毎日の避妊管理から解放される、非常に魅力的な避妊方法です。その優れた避妊率、長期的な持続性、エストロゲンを含まないことによる利用者の拡大、そして生理に関する副効用は、多忙な現代女性にとって大きなメリットとなりえます。

しかし、日本ではまだ医薬品医療機器等法上の承認を得ていないため、公的な医療保険が適用されず、提供できる医療機関も限られています。また、不正出血などの副作用や、挿入・除去に伴うリスク、そして万が一のトラブル発生時の医薬品副作用被害救済制度の対象外であることなど、未承認薬であることのリスクを十分に理解しておく必要があります。

アメリカをはじめとする多くの国でその安全性と有効性が認められ、広く普及している避妊インプラントですが、日本で検討する際には、以下の点を特に重視しましょう。

  • 信頼できる情報源からの正確な知識の習得
  • 避妊インプラントの取り扱い経験が豊富な医師による十分な説明とカウンセリング
  • メリットとデメリット、費用、リスクを総合的に判断した上でのご自身の納得

避妊方法は、女性の健康とライフプランに深く関わる重要な選択です。避妊インプラントは強力な選択肢の一つですが、個人の体質、生活状況、将来の希望に合致するかどうかを専門医とじっくり話し合い、納得のいく決定をすることが何よりも大切です。

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免責事項:
この記事は避妊インプラントに関する一般的な情報提供を目的としており、特定の医療行為を推奨したり、医療上のアドバイスを行ったりするものではありません。個人の健康状態や治療に関する決定は、必ず専門の医師と相談し、その指示に従ってください。記事の内容は執筆時点のものであり、医学的知見や法制度の変更により更新される可能性があります。また、未承認薬に関する情報は、リスクを伴う可能性を考慮してご自身の判断でご利用ください。

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