子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)とは、子宮の筋肉の一部が増殖してできる良性の腫瘍(しゅよう)です。
30〜50代の女性に多く見られ、日本人女性の3人に1人が発症するといわれるほど身近な病気です。
多くは命に関わるものではありませんが、月経量の増加・貧血・下腹部の張り・不妊など、生活に影響を与える症状が出ることがあります。
筋腫の大きさやできる場所によって症状が異なり、「自覚がないまま進行する」ケースも少なくありません。
近年では、ピルやホルモン治療、腹腔鏡手術など体に負担の少ない治療法が増えており、症状に合わせた選択が可能になっています。
この記事では、子宮筋腫の原因・種類・症状・検査・治療・妊娠との関係・再発予防までを総合的に解説します。
「生理が重い」「お腹が張る」「鉄不足が続く」と感じたら、早めの婦人科受診で安心につなげましょう。
子宮筋腫とは?女性に多い良性腫瘍の基本知識
子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)は、子宮の筋肉(平滑筋)が増殖してできる良性のこぶ(腫瘍)です。
がんのように転移することはなく、命に関わる病気ではありませんが、大きさやできる位置によってさまざまな症状を引き起こすことがあります。
月経量が増える、下腹部が張る、貧血や疲れやすさを感じるなどの不調が現れたとき、原因の一つとして疑われるのが子宮筋腫です。
ここでは、子宮筋腫の基本的な特徴や発症の背景について解説します。
- 子宮の筋肉にできる「良性のこぶ」
- 発症年齢と発症率(30〜50代女性の約3人に1人)
- なぜできる?エストロゲンと遺伝の関係
- 筋腫の大きさと位置によって症状が変わる理由
多くの女性が経験する可能性のある病気だからこそ、正しい知識を持つことが早期発見と安心につながります。
子宮の筋肉にできる「良性のこぶ」
子宮筋腫は、子宮の筋層に発生する良性の腫瘍です。
子宮は筋肉でできており、妊娠中に赤ちゃんを守る重要な器官ですが、その筋肉の一部が異常に増殖してこぶ状(しこり状)になることで発症します。
発生する位置によって、子宮の内側(粘膜下筋腫)・筋肉の中(筋層内筋腫)・外側(漿膜下筋腫)などに分類されます。
多くは良性で命に関わることはありませんが、筋腫が大きくなると子宮の変形や圧迫症状を起こし、周囲の臓器(膀胱・腸)にも影響を及ぼすことがあります。
また、筋腫が複数できるケースも多く、検診などで偶然見つかることもあります。
発症年齢と発症率(30〜50代女性の約3人に1人)
子宮筋腫は、特に30〜50代の女性に多く発症します。
女性ホルモンの分泌が活発な年代ほどリスクが高く、閉経後には自然に小さくなる傾向があります。
国内外の統計によると、30歳以上の女性の約20〜30%が子宮筋腫を持っており、40代では3人に1人以上の割合になるとされています。
自覚症状がなく見過ごされるケースも多く、婦人科検診で初めて気づく人も少なくありません。
発症年齢が早いほど、月経量の増加や貧血などの症状が長く続くため、早めの診断と治療が大切です。
なぜできる?エストロゲンと遺伝の関係
子宮筋腫の原因は完全には解明されていませんが、女性ホルモン「エストロゲン」の影響が大きいと考えられています。
エストロゲンは子宮内膜を厚くし、妊娠を維持するホルモンですが、その働きが過剰になると筋肉細胞の増殖を促し、筋腫が大きくなるといわれています。
また、家族に子宮筋腫の既往がある場合は発症リスクが高まる傾向があり、遺伝的な要素も関係しています。
そのほか、肥満・ストレス・睡眠不足・冷えなど、ホルモンバランスを乱す生活習慣も影響すると考えられています。
つまり、子宮筋腫は「女性ホルモン」「遺伝」「生活環境」が重なって起こる多因子的な疾患といえます。
筋腫の大きさと位置によって症状が変わる理由
子宮筋腫の症状は、できる場所と大きさによって大きく異なります。
たとえば、子宮の内側にできる粘膜下筋腫は月経量が増えやすく、貧血の原因になります。
子宮の中央にできる筋層内筋腫は月経痛や下腹部の張りを引き起こし、外側にできる漿膜下筋腫は膀胱や腸を圧迫して頻尿や便秘を起こすことがあります。
また、筋腫の数が多い場合や、子宮全体が大きくなるケースでは、見た目の下腹部のふくらみとして現れることもあります。
このように、筋腫の性質は一人ひとり異なるため、定期的な検査で変化を追うことがとても大切です。
症状が軽くても放置せず、早めに医師に相談することで治療の選択肢が広がります。
子宮筋腫の種類とできる場所
子宮筋腫は、できる場所(位置)によって4つのタイプに分けられます。
それぞれのタイプで症状の出方が異なり、月経過多・腹部の張り・頻尿・便秘・痛みなど、体への影響もさまざまです。
筋腫の場所を正しく理解することは、自分に合った治療法を選ぶ第一歩となります。
- ① 筋層内筋腫(最も多いタイプ)
- ② 粘膜下筋腫(出血・貧血が起こりやすい)
- ③ 漿膜下筋腫(お腹の張りや圧迫感)
- ④ 頸部筋腫・有茎性筋腫など特殊なケース
どのタイプの筋腫かによって、治療方針や経過観察の期間も変わるため、検査で位置を明確に把握することが重要です。
① 筋層内筋腫(最も多いタイプ)
筋層内筋腫は、子宮の筋肉(筋層)の中にできるタイプで、全体の約70%を占める最も一般的な筋腫です。
子宮が全体的に大きくなるため、月経痛・下腹部の重さ・腰痛といった症状が現れやすくなります。
筋層の中にあるため、初期は自覚症状が少なく、徐々に月経量が増える・生理が長引くことで気づくことが多いです。
大きくなると膀胱や腸を圧迫して、頻尿・便秘などの症状を引き起こす場合もあります。
サイズが小さいうちは経過観察で問題ありませんが、5cmを超える場合や症状が重いときは、ホルモン療法や手術が検討されます。
② 粘膜下筋腫(出血・貧血が起こりやすい)
粘膜下筋腫は、子宮の内側(子宮内膜の下)にできるタイプで、少しの大きさでも強い症状が出やすいのが特徴です。
子宮の内腔に突出しているため、月経量が非常に多くなり、レバー状の血の塊が出ることがあります。
その結果、慢性的な貧血・めまい・息切れ・倦怠感が起こりやすく、日常生活に影響を与えるケースも少なくありません。
また、粘膜下筋腫は受精卵の着床を妨げることがあるため、不妊や流産の原因になることもあります。
比較的小さい筋腫でも、症状が強い場合は子宮鏡手術で取り除くことが可能です。
③ 漿膜下筋腫(お腹の張りや圧迫感)
漿膜下筋腫は、子宮の外側に向かって発生するタイプで、お腹の張り・膨らみ・圧迫感が主な症状です。
子宮の外側に突き出るように成長するため、月経量が増えることは少ない一方で、膀胱や腸の圧迫による頻尿・便秘を引き起こします。
大きくなると下腹部がふくらんで見えることもあり、見た目の変化で気づく人もいます。
また、有茎性と呼ばれる「茎」でつながった筋腫は、ねじれ(茎捻転)を起こすと強い痛みを伴うため、緊急手術が必要になることがあります。
痛みや圧迫感が強い場合は、腹腔鏡手術で安全に摘出できることが多いです。
④ 頸部筋腫・有茎性筋腫など特殊なケース
頸部筋腫は、子宮の入り口(子宮頸部)にできるまれなタイプの筋腫で、性交時の痛みや不正出血を引き起こすことがあります。
また、有茎性筋腫は子宮の外側や内側に「茎」のような部分でつながっており、動きやすいため、ねじれや破裂を起こすリスクがあります。
このような特殊タイプの筋腫は、MRIなどで位置を正確に把握し、症状や妊娠希望の有無に応じて治療方針を決めます。
頸部筋腫や有茎性筋腫は、出血や痛みの原因になることが多く、早期発見と計画的な手術が重要です。
自覚症状が軽くても、年に一度の検診を受けることで安心して経過を見守ることができます。
子宮筋腫の主な症状
子宮筋腫の症状は、筋腫の大きさ・できる場所・数によって大きく異なります。
初期は無症状のことも多いですが、進行すると月経量の増加・貧血・下腹部の張りなど、生活に支障をきたす症状が現れることがあります。
ここでは、代表的な症状とその特徴を紹介します。
- 過多月経・レバー状の血の塊が出る
- 貧血・めまい・だるさ・冷え
- 下腹部の張り・圧迫感・頻尿・便秘
- 月経痛・性交痛・腰痛
- 無症状でも進行するケースもある
小さい筋腫でも症状が強く出ることがあり、また、複数の症状が同時に現れる場合もあります。
過多月経・レバー状の血の塊が出る
子宮筋腫の最も多い症状が過多月経(かたげっけい)です。
特に、子宮の内側にできる粘膜下筋腫では、子宮内膜が広がって月経時の出血量が増えやすくなります。
月経時にレバー状の血の塊が出たり、ナプキンを短時間で交換する必要があるほど出血が多くなるケースもあります。
長期間続くと鉄欠乏性貧血を引き起こし、疲れやすい・息切れする・集中力が落ちるといった症状に悩まされることもあります。
過多月経は年齢のせいではなく、子宮筋腫が原因である可能性が高いため、婦人科での検査が重要です。
貧血・めまい・だるさ・冷え
出血量の増加により体内の鉄分が不足すると、貧血(ひんけつ)症状が現れます。
代表的な症状には、めまい・立ちくらみ・倦怠感・息切れがあり、進行すると顔色が悪くなったり、手足の冷えを感じやすくなります。
特に働く女性や家事・育児をしている方は、慢性的な疲労と混同しがちですが、隠れ貧血が進行している場合も少なくありません。
貧血を改善するには、鉄剤や食事療法だけでなく、出血の原因である筋腫を治療することが根本的な対策になります。
定期的な血液検査で、自分の体の状態を把握しておくことが大切です。
下腹部の張り・圧迫感・頻尿・便秘
子宮筋腫が大きくなると、下腹部の張り・圧迫感を感じるようになります。
特に子宮の外側にできる漿膜下筋腫では、周囲の臓器を圧迫し、膀胱への圧迫で頻尿、直腸への圧迫で便秘が起こることがあります。
「下腹がぽっこり出てきた」「お腹が硬い感じがする」といった変化も、筋腫が大きくなっているサインです。
この状態を放置すると、血流が悪くなり足のむくみや腰のだるさなどの二次的症状を招くこともあります。
圧迫感や張りがあるときは、腹部超音波検査で早めに状態を確認しましょう。
月経痛・性交痛・腰痛
筋腫があると子宮の収縮が強くなり、月経痛(生理痛)が悪化しやすくなります。
特に筋層内や子宮内膜近くに筋腫があると、子宮が過剰に収縮して鈍い痛みやけいれんのような痛みが起こります。
また、筋腫の位置によっては性交時の痛み(性交痛)や腰痛を感じることもあります。
痛み止めで一時的に和らげることはできますが、根本的には筋腫の大きさや位置を治療する必要があります。
強い痛みが続く場合は、子宮腺筋症など他の疾患が隠れていることもあるため、婦人科での診断が不可欠です。
無症状でも進行するケースもある
子宮筋腫の約3〜4割は無症状のまま経過します。
しかし、無症状でも筋腫はゆっくりと成長するため、知らないうちに大きくなっていたというケースも珍しくありません。
閉経前後でホルモン分泌が変化すると筋腫が急に増大することもあり、注意が必要です。
症状がない場合でも、年1回の婦人科検診・超音波検査で定期的にチェックすることが早期発見につながります。
「自覚症状がない=安心」ではなく、「無症状でも確認を続ける」ことが子宮の健康を守るポイントです。
子宮筋腫の原因と発症メカニズム
子宮筋腫の明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、女性ホルモン(エストロゲン)の影響を中心に、遺伝・生活習慣・ストレスなど、複数の要因が関与していると考えられています。
筋腫はエストロゲンに反応して成長するため、ホルモン分泌の多い年代(30〜50代)に発症しやすく、閉経後は自然に小さくなる傾向があります。
ここでは、発症メカニズムを理解するための代表的な要因を紹介します。
- 女性ホルモン(エストロゲン)の影響
- 遺伝的体質・ストレス・肥満との関係
- 出産歴や閉経との関連
- ホルモンバランスの乱れを防ぐ生活習慣
原因を知ることで、筋腫の再発予防や悪化防止にもつながります。
女性ホルモン(エストロゲン)の影響
子宮筋腫の最大の原因とされているのが、女性ホルモン「エストロゲン」です。
エストロゲンは子宮内膜を厚くし、妊娠をサポートする働きを持っていますが、過剰に分泌されると子宮筋層の細胞増殖を促進し、筋腫が成長する原因となります。
そのため、エストロゲンが多く分泌される30〜40代に発症が増え、閉経後に減少することで筋腫が小さくなるケースが多く見られます。
また、ピルなどでホルモンバランスを安定させることで、筋腫の成長を抑える効果が期待できる場合もあります。
ホルモンの変動が大きいライフステージでは、体調変化を見逃さず、定期的に婦人科でチェックすることが大切です。
遺伝的体質・ストレス・肥満との関係
子宮筋腫は遺伝的な体質も関係していることが知られています。
母親や姉妹に子宮筋腫の既往がある場合、自身の発症リスクが高くなる傾向があります。
また、ストレス・肥満・過労などの生活要因も、ホルモン分泌を乱し、筋腫の成長を促すことがあります。
脂肪組織にはエストロゲンを作り出す酵素が存在するため、肥満体質の人はエストロゲン濃度が高くなりやすいのです。
さらに、慢性的なストレスは自律神経とホルモンバランスに影響を与え、排卵周期の乱れや筋腫の拡大につながる場合もあります。
体重管理とストレスケアが、ホルモン環境を整えるうえで重要なポイントとなります。
出産歴や閉経との関連
子宮筋腫は出産回数の少ない女性や未経産婦に多い傾向があります。
妊娠中は排卵が止まり、エストロゲン分泌が一時的に抑えられるため、出産を経験することで筋腫の発生リスクが下がると考えられています。
一方、閉経を迎えるとエストロゲンが減少し、筋腫は自然に縮小していくことが多いです。
ただし、閉経後も筋腫が大きくなる場合や、痛み・出血が続く場合は、悪性腫瘍(子宮肉腫)などの可能性も否定できないため、精密検査が必要です。
月経の変化が見られたときは、「年齢のせい」と思わず、医師に相談するようにしましょう。
ホルモンバランスの乱れを防ぐ生活習慣
子宮筋腫の予防や悪化防止には、ホルモンバランスを整える生活習慣が欠かせません。
特に意識したいのが、規則正しい睡眠・栄養バランス・体を冷やさない工夫です。
寝不足やストレスはホルモン分泌を乱し、エストロゲン過剰を招くことがあります。
また、食生活では脂質や糖分の摂りすぎを控え、イソフラボン(大豆製品)・ビタミンB群・鉄分を意識的に摂取することが推奨されます。
軽い運動やストレッチも血流を促進し、ホルモンの循環を整える助けになります。
「冷え・ストレス・食の乱れ」を防ぐことで、筋腫の再発予防や症状の軽減にもつながります。
検査・診断方法
子宮筋腫の診断は、症状や触診だけでは判断が難しいため、画像検査や血液検査を組み合わせて行います。
特に、筋腫の大きさ・数・できる場所によって治療方針が変わるため、正確な診断がとても重要です。
ここでは、婦人科で行われる主な検査の流れと、その目的について詳しく紹介します。
- 問診・内診での確認ポイント
- 超音波検査(経膣エコー)での診断
- MRIによる筋腫の位置・数・大きさの把握
- 子宮内膜症や子宮腺筋症との鑑別診断
- 貧血や腫瘍マーカーを調べる血液検査
検査自体は短時間で終わり、痛みも少ないものがほとんどです。早期発見・適切な治療につなげるためにも、定期的なチェックを心がけましょう。
問診・内診での確認ポイント
最初に行われるのが、問診と内診です。
問診では、月経の周期や出血量、痛みの有無、貧血症状、不妊の有無などを確認します。
内診では、医師が指で子宮や卵巣の大きさ・形・硬さを触って、しこりの有無や子宮の変形をチェックします。
この段階で子宮の腫れや異常が疑われた場合、超音波検査(エコー)などの画像検査に進みます。
定期検診や月経異常の相談時にも行われる一般的な検査です。
超音波検査(経膣エコー)での診断
超音波検査(経膣エコー)は、子宮や卵巣の状態を詳しく調べる最も基本的な検査です。
膣内に細いプローブを挿入し、子宮内部を超音波で映し出すことで、筋腫の位置・大きさ・数を確認できます。
痛みはほとんどなく、5〜10分ほどで終了します。
経膣検査が難しい場合は、腹部からのエコー(経腹超音波)で対応することもあります。
小さな筋腫や子宮内膜の厚さまで確認できるため、早期発見に非常に有効です。
MRIによる筋腫の位置・数・大きさの把握
より正確な診断が必要な場合は、MRI検査が行われます。
MRIでは、超音波では見えにくい複数の筋腫や深部の病変も明確に映し出すことができます。
子宮筋腫の種類(筋層内・粘膜下・漿膜下)や、周囲臓器への影響、癒着の有無なども詳しく評価できます。
また、子宮腺筋症や子宮内膜症との鑑別にも役立ち、手術計画を立てる際にも欠かせない検査です。
検査時間は30〜40分程度で、痛みはなく、放射線を使用しないため体への負担も少ないのが特徴です。
子宮内膜症や子宮腺筋症との鑑別診断
子宮筋腫は、症状が似ている子宮内膜症・子宮腺筋症と区別が必要です。
これらの疾患はいずれも月経痛や下腹部痛を伴いますが、発生する部位や組織の性質が異なります。
子宮筋腫は筋肉の中にこぶ状の腫瘍ができるのに対し、子宮腺筋症は子宮内膜が筋肉層に入り込む病気です。
MRIではこの違いがはっきりわかるため、診断の決め手となることも多いです。
正確な鑑別により、ホルモン療法や手術の適応を適切に判断できます。
貧血や腫瘍マーカーを調べる血液検査
子宮筋腫による過多月経・貧血の程度を確認するために、血液検査も行われます。
ヘモグロビン値やフェリチン値を測定し、貧血の有無や重症度を判断します。
また、悪性腫瘍との鑑別のために、腫瘍マーカー(CA125・CEA・CA19-9など)を測定することもあります。
数値の上昇がある場合は、筋腫以外の疾患が隠れていないかを確認します。
血液検査は体への負担が少なく、定期的なモニタリングにも適しています。
子宮筋腫の治療法|年齢・症状・妊娠希望で異なる選択
子宮筋腫の治療は、筋腫の大きさ・数・位置だけでなく、年齢・症状の重さ・妊娠希望の有無によって大きく変わります。
すべての筋腫に手術が必要というわけではなく、経過観察で様子を見るケースから、ホルモン療法・外科的手術まで多様な選択肢があります。
ここでは、主な治療法の特徴と選択のポイントを解説します。
- ① 経過観察(小さい筋腫・無症状の場合)
- ② 薬物療法(ピル・GnRHアゴニスト・選択的プロゲステロン調整薬)
- ③ 子宮筋腫摘出術(腹腔鏡手術・開腹手術)
- ④ 子宮全摘出術(閉経後・再発防止を目的に)
- ⑤ 子宮動脈塞栓術(UAE)など新しい治療法
どの治療法が適しているかは、医師との相談を通じて、将来の妊娠や生活の質(QOL)を考慮しながら決定することが大切です。
① 経過観察(小さい筋腫・無症状の場合)
筋腫が3〜4cm以下で症状がない場合は、すぐに治療を始めず経過観察で様子を見るのが一般的です。
半年〜1年ごとに超音波検査を行い、筋腫の大きさや数の変化をチェックします。
閉経が近い女性では、ホルモン分泌の減少により自然に縮小することもあります。
ただし、急速に大きくなる場合や、出血・痛みなどの症状が出てきた場合は、早めの治療方針の見直しが必要です。
無症状であっても、定期検診を怠らず、変化を見逃さないことが重要です。
② 薬物療法(ピル・GnRHアゴニスト・選択的プロゲステロン調整薬)
薬による治療は、症状を抑えること・筋腫の成長を止めることを目的に行われます。
低用量ピルはホルモンの変動を安定させ、月経量を減らし、月経痛を和らげます。
GnRHアゴニスト(リュープロレリンなど)は一時的に更年期のような状態を作り出し、筋腫を縮小させます。
また、選択的プロゲステロン受容体調整薬(SPRM)は、ホルモンバランスを保ちながら出血を抑え筋腫を小さくする新しい治療法です。
ただし、薬の効果は一時的で、服用をやめると再び筋腫が大きくなる可能性があるため、手術前の準備や一時的な症状緩和として使われることもあります。
③ 子宮筋腫摘出術(腹腔鏡手術・開腹手術)
子宮を残したまま筋腫だけを取り除く手術で、妊娠を希望する女性に選ばれることが多い方法です。
腹腔鏡手術はお腹に小さな穴を開けて行うため、傷が小さく回復が早いのが特徴です。
一方、筋腫が大きい・数が多い場合は、開腹手術が必要になることもあります。
術後は数日〜1週間程度の入院が一般的で、数か月で通常の生活に戻ることができます。
再発のリスクはありますが、月経痛や出血が大幅に改善されるケースが多いです。
④ 子宮全摘出術(閉経後・再発防止を目的に)
閉経が近い・再発を繰り返している・筋腫が非常に大きい場合には、子宮全摘出術が選択されることがあります。
子宮をすべて取り除くため、再発の心配がなくなるのが最大のメリットです。
ただし、妊娠ができなくなるため、妊娠希望がある方には適していません。
手術は腹腔鏡・開腹・膣式などの方法があり、体への負担や回復の早さは術式によって異なります。
最近では、子宮体部だけを切除し、卵巣を残す選択肢もあり、ホルモンバランスを保ちながらの治療も可能になっています。
⑤ 子宮動脈塞栓術(UAE)など新しい治療法
子宮動脈塞栓術(UAE)は、メスを使わずに筋腫を小さくする最新の治療法です。
太ももの血管からカテーテルを挿入し、筋腫に栄養を送る血管を塞ぐことで筋腫を自然に縮小させます。
手術に比べて体への負担が少なく、数日で退院できるケースも多いです。
ただし、妊娠への影響や再発のリスクが完全には解明されていないため、妊娠希望のある女性には慎重に検討する必要があります。
その他にも、超音波やレーザーを用いた集束超音波治療(FUS)など、体にやさしい新しい治療法が開発されています。
自分のライフステージや希望に合った治療を医師と相談しながら選択しましょう。
手術の流れと回復期間
子宮筋腫の手術は、筋腫の大きさ・数・位置・症状、そして妊娠希望の有無によって手術方法が異なります。
最近では、体への負担が少ない腹腔鏡手術が主流となり、入院期間も短くなっています。
ここでは、手術の種類や入院期間、術後の回復の流れについて詳しく解説します。
- 手術の種類と入院期間
- 腹腔鏡手術と開腹手術の違い
- 手術後の痛み・出血・回復までの目安
- 仕事復帰・運動・性生活の再開時期
術式を理解しておくことで、手術への不安を減らし、安心して治療に臨むことができます。
手術の種類と入院期間
子宮筋腫の手術にはいくつかの方法がありますが、代表的なのは腹腔鏡手術と開腹手術です。
腹腔鏡手術は、お腹に3〜4か所の小さな穴を開け、カメラと器具を挿入して筋腫を取り除く方法で、傷が小さく回復が早いのが特徴です。
一方、開腹手術は下腹部を10cmほど切開して行い、筋腫が大きい・複数ある場合に選択されます。
入院期間の目安は、腹腔鏡手術で3〜5日程度、開腹手術で7〜10日程度です。
手術の種類は、筋腫の大きさや数、将来の妊娠希望、医師の技術や施設の設備によって決定されます。
腹腔鏡手術と開腹手術の違い
腹腔鏡手術は、体への負担が少なく、痛みも比較的軽く済むのが特徴です。
術後の回復が早く、1週間以内に退院し、1〜2週間で仕事復帰が可能なこともあります。
また、傷跡が目立ちにくいため、美容面でもメリットがあります。
ただし、筋腫が非常に大きい場合や複数存在する場合には、開腹手術が必要となることがあります。
開腹手術は視野が広く、出血量の多いケースや複雑な筋腫にも対応できますが、術後の痛みや回復期間が長くなる傾向があります。
どちらの手術にもメリット・デメリットがあるため、医師と相談し自分に合った術式を選ぶことが大切です。
手術後の痛み・出血・回復までの目安
術後は、筋腫を取り除いた部位の修復や体の回復に時間が必要です。
痛みは個人差がありますが、腹腔鏡手術では数日間軽い痛みが続き、鎮痛薬でコントロール可能です。
出血は1〜2週間ほど軽い出血が見られる場合があり、生理のような出血が続くこともあります。
体の回復には2〜4週間ほどかかり、この間は無理をせず安静に過ごすことが重要です。
発熱や強い痛み、出血量の増加が見られる場合は、感染や出血の可能性もあるため、すぐに医療機関へ連絡しましょう。
仕事復帰・運動・性生活の再開時期
仕事復帰の目安は、腹腔鏡手術で1〜2週間後、開腹手術で3〜4週間後が一般的です。
軽い家事やデスクワークは比較的早く再開できますが、重い荷物を持つ・激しい運動をするのは避けるべきです。
また、性生活の再開は術後1か月〜1.5か月を目安とし、医師の指示を受けてから行うようにします。
体が完全に回復するまでに個人差があるため、「痛みがなくなったから大丈夫」と自己判断せず、定期的な経過観察を続けましょう。
無理をせず段階的に日常生活へ戻すことで、再発防止と安全な回復につながります。
妊娠・出産への影響
子宮筋腫は良性の腫瘍ですが、妊娠・出産に影響を及ぼす可能性があります。
筋腫の位置や大きさによっては、妊娠しにくくなることや、妊娠中に合併症を引き起こすこともあります。
また、筋腫の治療内容やタイミングは、妊娠を希望するかどうかによって大きく変わります。
ここでは、子宮筋腫と妊娠・出産に関する代表的なポイントを解説します。
- 子宮筋腫が妊娠に与える影響
- 妊娠中に筋腫が大きくなる理由
- 流産・早産・帝王切開のリスク
- 妊娠希望時の治療法選択とタイミング
正しい知識を持つことで、安心して妊娠・出産を迎える準備ができます。
子宮筋腫が妊娠に与える影響
子宮筋腫の中でも、特に子宮内膜の近く(粘膜下筋腫)にできるタイプは、妊娠に影響を与える可能性があります。
受精卵が着床する場所が変形したり、子宮内腔が狭くなることで、着床しづらくなることがあるのです。
また、筋腫が大きい場合や多数ある場合には、受精卵の成長スペースが狭まり流産や早産のリスクが高まることもあります。
一方で、筋腫が子宮の外側(漿膜下)にある場合は、妊娠への影響が少ないケースもあります。
筋腫の位置や大きさを正確に把握し、医師と相談のうえで治療や妊活のタイミングを決めることが大切です。
妊娠中に筋腫が大きくなる理由
妊娠中は体内でエストロゲンとプロゲステロンといったホルモンが増加します。
これらのホルモンは、妊娠の維持に重要な役割を果たしますが、同時に筋腫の細胞を刺激して成長させる働きもあります。
特に妊娠初期から中期にかけて、筋腫が一時的に大きくなることがあります。
ただし、すべての筋腫が大きくなるわけではなく、妊娠後期には自然に縮小していくケースも多いです。
痛みや張りを感じる場合は、筋腫への血流が増えすぎて炎症や壊死を起こしている可能性もあり、早めの医師の診察が必要です。
妊娠中は定期的な超音波検査で筋腫の状態を確認しながら、母体と胎児の健康を守ることが大切です。
流産・早産・帝王切開のリスク
子宮筋腫を持つ妊婦さんは、筋腫の位置や大きさによって流産・早産・逆子・帝王切開のリスクが高くなる傾向があります。
特に、筋腫が胎盤の近くや子宮口の近くにある場合、胎盤の着床異常や出血を起こすことがあります。
また、分娩時に筋腫が産道を圧迫すると、陣痛が弱くなる(微弱陣痛)や出産が進みにくいといったトラブルが起こる可能性もあります。
そのため、医師の判断で帝王切開による安全な出産を選択するケースが少なくありません。
一方、筋腫が小さく、胎児や子宮口に影響しない場合は、自然分娩が可能なこともあります。
妊娠中は産科と連携しながら、個々の状態に合わせた出産プランを立てることが重要です。
妊娠希望時の治療法選択とタイミング
妊娠を希望している場合、子宮を温存する治療法を選ぶことが原則です。
具体的には、子宮筋腫摘出術(腹腔鏡・子宮鏡)が選択されることが多く、筋腫を取り除くことで妊娠率が改善することもあります。
ただし、手術後は子宮の傷が回復するまでに時間が必要なため、3〜6か月程度は妊娠を控える期間が設けられます。
また、筋腫の大きさや数によっては、薬物療法(GnRHアゴニスト)で一時的に縮小させてから妊活を再開する方法もあります。
「妊娠したいけれど筋腫がある」ときは、焦らず医師と相談し、最適な治療タイミングと安全な妊娠準備を進めることが大切です。
専門医による治療計画のもと、安心して妊娠を目指しましょう。
子宮筋腫と更年期の関係
子宮筋腫はホルモン(エストロゲン)の影響を強く受ける疾患のため、更年期や閉経と深く関係しています。
多くの女性は閉経を迎えるとホルモン分泌が減少し、筋腫が自然に小さくなる傾向があります。
しかし一部では、ホルモン補充療法(HRT)によって再び成長するケースや、閉経前後に出血・痛みが続く場合もあるため注意が必要です。
ここでは、更年期と子宮筋腫の関係を理解し、上手に付き合うためのポイントを解説します。
- 閉経後に小さくなる理由
- ホルモン補充療法(HRT)で再発する可能性
- 閉経前後の出血・痛みへの対応法
更年期の体の変化を理解し、安心して過ごすためにも定期的な検診と適切な治療を続けることが大切です。
閉経後に小さくなる理由
子宮筋腫は女性ホルモン「エストロゲン」に反応して大きくなる性質があります。
そのため、閉経を迎えるとエストロゲン分泌が急激に減少し、筋腫は自然と縮小していく傾向があります。
閉経後は、月経周期がなくなることで子宮への刺激も減り、筋腫の成長スピードがほぼ止まります。
小さな筋腫であれば、治療をしなくても数年のうちに消失するケースも少なくありません。
ただし、閉経後も筋腫が大きくなり続ける場合は、子宮肉腫など悪性疾患の可能性もあるため、MRIや血液検査などで精密に調べることが必要です。
閉経後も年に1回程度の婦人科検診を継続することで、早期発見と安心につながります。
ホルモン補充療法(HRT)で再発する可能性
ホルモン補充療法(HRT)は、更年期のホットフラッシュ・不眠・イライラなどを緩和する効果がありますが、エストロゲンを補う治療でもあります。
そのため、HRTを行うと筋腫の成長を刺激する可能性があると報告されています。
特に閉経前後でまだ筋腫が残っている場合や、大きめの筋腫がある方は、治療開始前に十分な検査と医師の判断が必要です。
ただし、すべての人が悪化するわけではなく、低用量のHRTやプロゲステロン(黄体ホルモン)を併用することで、リスクを最小限に抑えることができます。
HRTを希望する場合は、筋腫の大きさや症状を定期的に確認しながら、安全に治療を続けることが大切です。
閉経前後の出血・痛みへの対応法
閉経前後はホルモンバランスが大きく変化し、月経周期の乱れ・不正出血・下腹部の痛みなどが起こりやすくなります。
この時期に筋腫があると、出血量が増えたり、月経が長引いたりすることがあります。
出血が続く場合は貧血や体力低下につながるため、放置せず婦人科で相談しましょう。
軽度であれば、ピルやホルモン剤によるコントロールで症状を和らげることができます。
また、痛みが強い場合には鎮痛薬の使用や、筋腫のサイズによっては一時的なホルモン抑制療法(GnRHアゴニストなど)も検討されます。
閉経前後は「もう治療しなくても大丈夫」と思われがちですが、症状を我慢せず、体の変化に合わせたケアを行うことが重要です。
ホルモン変動期を穏やかに乗り越えるために、医師と相談しながら無理のない治療計画を立てましょう。
再発を防ぐ生活習慣・セルフケア
子宮筋腫はホルモンバランスの影響を受けやすいため、治療後も再発を防ぐためには日々の生活習慣が大切です。
特に、体の冷えやストレス、偏った食生活はエストロゲンの分泌を乱し、筋腫の再発や成長を促す原因になります。
ここでは、筋腫の再発を防ぐために意識したいセルフケアのポイントを紹介します。
- 体を冷やさない・血流を良くする
- バランスの良い食事(鉄分・ビタミン・イソフラボン)
- ストレス軽減・質の高い睡眠
- 定期的な婦人科検診の継続
小さな心がけを積み重ねることで、再発を防ぎ、健康的なホルモンバランスを維持することができます。
体を冷やさない・血流を良くする
冷えは子宮や骨盤内の血流を悪化させ、ホルモンバランスの乱れや代謝低下を引き起こします。
特に下半身を温めることが重要で、靴下・腹巻き・湯たんぽなどを活用すると効果的です。
また、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動で血液循環を促進し、子宮内の環境を整えることができます。
長時間の冷房や冷たい飲み物の摂りすぎにも注意し、体の内外から温める習慣をつけましょう。
バランスの良い食事(鉄分・ビタミン・イソフラボン)
子宮筋腫の予防・再発防止には、ホルモンバランスを整える食事が欠かせません。
特に意識したい栄養素は、鉄分・ビタミンB群・ビタミンE・イソフラボンです。
鉄分は過多月経による貧血を防ぎ、ビタミンB群やEはホルモン代謝を助けます。
また、大豆に含まれるイソフラボンは、体内でエストロゲンに似た作用を持ち、ホルモンバランスの安定に役立ちます。
過剰な脂質や糖分、加工食品の摂取を控え、野菜・海藻・魚・豆類を中心とした食生活を心がけましょう。
ストレス軽減・質の高い睡眠
ストレスは自律神経を乱し、ホルモン分泌にも影響を与えます。
忙しい毎日でも、リラックスする時間を意識的に取り入れることが大切です。
深呼吸・アロマ・ヨガ・ぬるめの入浴など、副交感神経を整える習慣を日常に取り入れましょう。
また、睡眠不足はエストロゲンとプロゲステロンのリズムを崩すため、1日7時間前後の質の良い睡眠を確保することも重要です。
心と体のバランスを整えることで、筋腫の再発リスクを抑えることができます。
定期的な婦人科検診の継続
子宮筋腫は再発しやすい疾患のひとつです。
治療後も半年〜1年に1回は婦人科検診を受け、超音波検査などで筋腫の有無を確認しましょう。
無症状でも知らないうちに筋腫が再び大きくなっているケースもあります。
定期検診を続けることで、早期発見・早期対応が可能となり、手術を回避できる場合もあります。
自分の体を守るために、「治ったから終わり」ではなく「予防の継続」を意識することが大切です。
子宮筋腫と他の病気との違い
子宮筋腫は女性に多い良性腫瘍ですが、子宮内膜症・子宮腺筋症・卵巣嚢腫など、症状が似ている疾患も多く存在します。
それぞれの病気で痛みの出方・出血の特徴・発生部位が異なるため、正しい診断を受けることが重要です。
ここでは、子宮筋腫と混同されやすい病気の違いをわかりやすく解説します。
- 子宮内膜症・子宮腺筋症との違い
- 卵巣嚢腫・がんとの鑑別ポイント
似た症状でも原因や治療法がまったく異なるため、自己判断せず婦人科での正確な診断を受けることが大切です。
子宮内膜症・子宮腺筋症との違い
子宮内膜症は、本来子宮の内側にあるべき子宮内膜組織が子宮の外側に発生する病気です。
卵巣・腹膜・骨盤などに出現し、慢性的な炎症や癒着を起こすのが特徴です。
月経痛・排卵痛・性交痛などの症状が強く、月経以外の時期にも痛みが続くことがあります。
一方、子宮腺筋症は子宮内膜が子宮の筋肉層に入り込む病気で、子宮全体が腫れて硬くなります。
子宮筋腫は筋肉内にこぶ状の腫瘤ができるのに対し、腺筋症は子宮全体が膨張するのが大きな違いです。
また、画像検査(超音波やMRI)では、筋腫が丸い境界のある腫瘍として見えるのに対し、腺筋症は境界がぼやけた肥厚として映ります。
どちらも月経痛や出血量の増加など似た症状を示しますが、治療法が異なるため正確な鑑別が必要です。
卵巣嚢腫・がんとの鑑別ポイント
卵巣嚢腫は卵巣の中や表面に液体や半固形物がたまる袋状の腫瘍です。
子宮筋腫と同様に下腹部の張りや圧迫感を伴いますが、子宮ではなく卵巣にできる点が大きく異なります。
また、卵巣嚢腫は破裂やねじれ(卵巣捻転)を起こすと、突然の激痛を伴うため緊急治療が必要になることがあります。
一方、子宮がん・卵巣がんなどの悪性腫瘍は、筋腫と見た目が似ていても進行速度が速く、出血や体重減少が特徴的です。
画像検査や血液検査(腫瘍マーカー)を組み合わせることで、良性か悪性かを見極めることが可能です。
特に閉経後に筋腫が急に大きくなった場合は、悪性化(子宮肉腫)の可能性もあるため注意が必要です。
婦人科では、超音波検査・MRI・腫瘍マーカー(CA125など)を用いて総合的に診断を行います。
似た症状でも原因はさまざまなので、違和感を感じたら早めに受診し、正確な判断を受けることが重要です。
よくある質問(FAQ)
子宮筋腫については「がんになる?」「ピルで治る?」など、多くの疑問や不安を持つ方が少なくありません。
ここでは、患者さんからよく寄せられる質問をもとに、正しい理解と安心につながる回答をまとめました。
Q1. 子宮筋腫はがんになりますか?
子宮筋腫は良性の腫瘍であり、基本的にはがん化することはほとんどありません。
ただし、まれに子宮肉腫という悪性腫瘍が筋腫に似た形で発生することがあります。
特に閉経後にも急速に大きくなる場合や、痛み・出血が増える場合は、念のためMRIや血液検査での精密検査が推奨されます。
良性でも放置すると貧血や不妊などのリスクがあるため、定期的に経過をチェックしましょう。
Q2. ピルで筋腫は小さくなりますか?
低用量ピルはホルモンの変動を安定させ、月経量や痛みを軽減する効果があります。
ただし、ピルは筋腫を「小さくする」よりも、進行を抑える・症状をコントロールする目的で使われます。
筋腫が小さいうちや、症状が軽い場合に有効な治療法であり、再発予防にも役立ちます。
一方、筋腫が大きい場合はピルだけでの改善は難しく、手術やホルモン療法が検討されることもあります。
Q3. 妊娠したら筋腫はどうなりますか?
妊娠中はエストロゲンやプロゲステロンの分泌が増えるため、一時的に筋腫が大きくなることがあります。
多くは妊娠後期〜出産後に自然に小さくなりますが、筋腫の位置によっては流産・早産・帝王切開のリスクが上がることもあります。
妊娠中に強い痛みや出血がある場合は、筋腫が血流障害を起こしている可能性もあり、医師の診察が必要です。
妊娠前に筋腫が見つかった場合は、治療を終えてから妊活を始めることが推奨されます。
Q4. 手術後に再発することはありますか?
子宮筋腫は再発しやすい疾患であり、手術で筋腫を取り除いても再発する可能性があります。
特に20〜40代の女性では、ホルモンの分泌が活発なため、数年後に新たな筋腫ができるケースもあります。
再発を防ぐためには、術後もホルモンバランスを整える生活(冷え・ストレス・食事の改善)を意識し、定期的な超音波検査を受けることが大切です。
また、ピルやホルモン療法を継続することで再発リスクを抑えられる場合もあります。
Q5. 閉経したら自然に治りますか?
閉経するとエストロゲンの分泌が減少し、多くの筋腫は自然に縮小します。
そのため、更年期以降は経過観察のみで済むケースが多いです。
ただし、閉経後にも筋腫が大きくなる場合や、出血が続く場合は悪性化(子宮肉腫)の可能性もあるため、検査を受けましょう。
閉経を迎えても、年に1回の婦人科検診を継続することが安心につながります。
Q6. 子宮を残して治療することは可能?
はい、子宮を温存した治療は可能です。
妊娠希望のある方や、子宮を残したい方には、子宮筋腫摘出術(筋腫のみ除去)や子宮動脈塞栓術(UAE)が選択肢となります。
筋腫の大きさ・位置・数によっては腹腔鏡や子宮鏡を用いた低侵襲手術も可能で、回復も早いです。
一方、閉経が近く再発を防ぎたい場合は、子宮全摘出術が検討されることもあります。
ライフステージに合わせて、最も負担の少ない治療を選ぶことが大切です。
まとめ:子宮筋腫は「良性」でも放置せず、早期発見・定期検診が大切
子宮筋腫は命に関わる病気ではありませんが、放置すると貧血・不妊・痛みの悪化など生活の質を大きく下げることがあります。
定期的な検診で早期に発見し、症状・年齢・ライフプランに合わせた治療を行うことで、安心して日常生活を送ることができます。
「良性だから大丈夫」と思わず、体のサインに耳を傾け、婦人科と上手に付き合っていきましょう。
