妊娠中のつわりがひどくて、吐き気やえづきが止まらない…。食べたいのに食べられない、匂いだけで気持ち悪くなる――そんなつらい時期を過ごしている妊婦さんは少なくありません。
つわりは妊娠初期に起こる自然な体の反応ですが、症状の重さには個人差があります。なかには水すら受けつけず、体力的にも精神的にも限界を感じる人もいるでしょう。
この記事では、妊娠中のつわりがひどいときに試してほしい「8つの対策」を医師監修の知識をもとにわかりやすく紹介します。吐き気やえづきをやわらげる具体的な方法から、食べやすい食事、病院へ行くべきサインまで徹底解説。
「少しでも楽になりたい」「何を食べたらいいかわからない」という方は、ぜひ参考にしてください。
つわりとは？妊娠初期に起こる体の変化
つわりとは、妊娠初期に多くの女性が経験する体調の変化で、主に吐き気・えづき・食欲不振・匂いへの過敏反応などの症状を指します。
妊娠によって体内のホルモンバランスが急激に変化し、自律神経や消化機能に影響を与えるために起こると考えられています。
ここでは、つわりの原因や発症時期、症状の特徴、そして種類ごとの違いについて詳しく解説します。
- つわりの主な原因（ホルモン・自律神経・精神的要因）
- いつからいつまで続く？つわりの時期とピーク
- つわりの代表的な症状（吐き気・えづき・食欲不振・匂いづわり）
- つわりの種類：吐きづわり／食べづわり／よだれづわり／匂いづわり
つわりはつらいものですが、原因を理解し、症状に合った対策を取ることで体も心も少しずつ楽になります。
つわりの主な原因（ホルモン・自律神経・精神的要因）
つわりの原因は完全には解明されていませんが、主にホルモンの急変化・自律神経の乱れ・精神的ストレスの3つが関係していると考えられています。
妊娠初期には「hCG（ヒト絨毛性ゴナドトロピン）」というホルモンが急増し、体が妊娠を維持するための準備を始めます。
このホルモンの変化が胃腸の働きや脳の嘔吐中枢を刺激し、吐き気やえづきといった症状を引き起こすのです。
また、自律神経のバランスが崩れることで、食欲や睡眠のリズムも乱れやすくなります。
さらに、妊娠への不安や生活環境の変化による精神的ストレスもつわりを悪化させる要因の一つです。
複数の要素が重なって発症するため、原因をひとつに特定することは難しく、個人差も大きいのが特徴です。
いつからいつまで続く？つわりの時期とピーク
つわりは妊娠4〜6週頃に始まり、8〜11週頃にピークを迎えることが多いです。
一般的には妊娠12〜16週（妊娠4か月ごろ）には落ち着く人が多いですが、まれに安定期を過ぎても続くケースもあります。
妊娠が進むにつれて胎盤が完成し、ホルモンバランスが安定することで症状が自然に軽減します。
しかし、つわりの期間や重さには個人差があり、軽い人では数日で終わる一方、重度の場合は体重が減少して入院治療が必要なこともあります。
特に水分が摂れない・食べ物を受けつけない場合は「妊娠悪阻（にんしんおそ）」の可能性もあるため、早めに婦人科を受診しましょう。
体の変化を無理に我慢せず、必要に応じて医師のサポートを受けることが大切です。
つわりの代表的な症状（吐き気・えづき・食欲不振・匂いづわり）
つわりの症状は人によって異なりますが、代表的なのは吐き気・えづき・食欲不振・匂いへの過敏反応などです。
特に朝起きたときや空腹時に強くなる傾向があり、においに敏感になる「匂いづわり」が顕著な人もいます。
好きだった食べ物や香水の匂いで気持ち悪くなったり、調理中の匂いに耐えられなくなるケースも少なくありません。
また、胃がムカムカする・唾液が増える・頭が重く感じるなど、身体全体のだるさを伴うこともあります。
つわりの症状は体だけでなく、食事へのストレスや睡眠不足など、メンタル面にも影響を及ぼします。
症状の強さは日によって変動するため、「昨日は食べられたのに今日は無理」という日も珍しくありません。
体調の波を受け入れながら、無理のない生活リズムを心がけることが大切です。
つわりの種類：吐きづわり／食べづわり／よだれづわり／匂いづわり
つわりにはいくつかのタイプがあり、症状や対処法も異なります。
最も一般的なのが吐きづわりで、食べたものをすぐ吐いてしまう・えづきが止まらないなどの症状が現れます。
次に多いのが食べづわりで、空腹になると気持ち悪くなり、常に何かを口にしていないと落ち着かないタイプです。
よだれづわりは、唾液の分泌が異常に増え、飲み込むことが難しくなる症状です。
また、匂いづわりは香りや臭いに過敏に反応し、特定のにおいで強い吐き気を感じるのが特徴です。
複数のタイプが同時に起こることもあり、その日の体調や環境によって症状が変化します。
それぞれのタイプに合った食事・環境調整を行うことで、症状を少しずつ和らげることができます。
妊娠中のつわりがひどい時に試したい8つの対策
つわりがひどいときは、無理に食事や家事を頑張ろうとせず、体を第一に休めることが大切です。
症状の重さや原因は人それぞれですが、ちょっとした工夫で吐き気やえづきを軽減できることがあります。
ここでは、妊娠中のつわりを少しでも楽にするための実践的な8つの対策を紹介します。
- ① 無理に食べようとせず、食べられるものを少しずつ
- ② 冷たい飲み物・ゼリーなどで水分補給をこまめに
- ③ 匂いの強いものを避け、換気やマスクで工夫する
- ④ 寝起き・空腹を避けるため、枕元に軽食を置く
- ⑤ 食事回数を増やして1回量を減らす（分食）
- ⑥ ミント・レモン・しょうがなど香りでリラックス
- ⑦ 体を締め付けない服装・姿勢で過ごす
- ⑧ 我慢せず病院へ相談！点滴・薬で楽になる場合も
どれか一つでも自分に合う方法を見つけて、体に無理のない範囲で取り入れてみましょう。
① 無理に食べようとせず、食べられるものを少しずつ
つわりが強いときは、無理に食べようとすることで吐き気や嘔吐が悪化することがあります。
「食べなければ」と思うよりも、食べられるタイミングで少しずつ口にすることが大切です。
冷たくて喉ごしの良いもの（そうめん・ゼリー・果物・アイスなど）は比較的受け入れやすい傾向があります。
温かい食べ物や油っぽい料理、においの強い食品は避け、体が「食べられそう」と感じた時に食べるようにしましょう。
食べられるものだけを少量ずつ摂るだけでも、エネルギー補給につながります。
食事の回数よりも「食べられる内容」を優先することで、ストレスが減り、体調が安定しやすくなります。
② 冷たい飲み物・ゼリーなどで水分補給をこまめに
脱水症状はつわりを悪化させる大きな要因です。
一度にたくさん飲むと吐きやすくなるため、少しずつこまめに水分を取るようにしましょう。
常温の水がつらい場合は、冷たい麦茶・スポーツドリンク・ゼリー飲料などを試すのもおすすめです。
炭酸水は喉ごしが良く、気分転換にもなりますが、胃に刺激を感じる場合は控えましょう。
氷を口に含んだり、ストローを使って飲むと少量ずつ摂りやすくなります。
水分が取れない状態が続くと、体重減少や尿量減少など妊娠悪阻（にんしんおそ）のリスクも高まるため注意が必要です。
③ 匂いの強いものを避け、換気やマスクで工夫する
妊娠初期は嗅覚が敏感になるため、匂いづわりで気分が悪くなることがあります。
料理の匂いや洗剤・化粧品の香りなど、普段気にならない匂いでも不快に感じる場合があります。
調理中は換気扇を強めに回す、窓を開けて空気を入れ替えるなど、室内の換気をこまめに行いましょう。
どうしても匂いがつらい場合は、マスクを着用して香りを軽減するのも有効です。
また、家族に調理を任せたり、惣菜や冷凍食品を活用するのも無理のない選択です。
「匂いを避ける工夫」は、つわりを軽くするうえで非常に重要なポイントです。
④ 寝起き・空腹を避けるため、枕元に軽食を置く
つわりは空腹時や起床直後に強く出やすい傾向があります。
そのため、寝る前や起きる前に軽く食べ物を口にすることで、胃のむかつきを和らげることができます。
おすすめはクラッカー・ドライフルーツ・バナナなど、匂いが少なく消化の良いものです。
朝はすぐに起き上がらず、ベッドの上で少し食べてからゆっくり体を起こすようにしましょう。
胃が空っぽの時間を減らすことで、嘔吐反射を抑えやすくなります。
小さな習慣ですが、継続することで朝の吐き気が軽減されるケースが多く見られます。
⑤ 食事回数を増やして1回量を減らす（分食）
1回の食事量を減らして、1日5〜6回に分けて食べる分食は、つわり対策に非常に効果的です。
少量ずつ食べることで、胃に負担をかけずに栄養を補給できます。
また、空腹時間が短くなるため、吐き気やえづきを予防しやすくなります。
おにぎり・スープ・クラッカー・ヨーグルトなど、軽く食べられる食品を中心に取り入れましょう。
「時間を決めて食べる」よりも「お腹が空いたときに食べる」意識の方が体に優しいです。
体調に合わせて柔軟に対応することが、ストレスを減らし、つわりの悪化を防ぐポイントです。
⑥ ミント・レモン・しょうがなど香りでリラックス
嗅覚が敏感な時期だからこそ、リラックスできる香りを取り入れると心身が落ち着きやすくなります。
爽やかなミントやレモンの香りは吐き気を抑える効果があり、マスクやハンカチに少量つけておくのもおすすめです。
しょうが（ジンジャー）には胃の働きを整える作用があり、ジンジャーティーやしょうが飴などを試すのも良いでしょう。
ただし、香りが強すぎると逆に気分が悪くなることがあるため、自分に合う香りを少量から取り入れてください。
五感をリラックスさせることで、自律神経が安定し、つわりの症状が軽減されやすくなります。
アロマオイルを使用する場合は、妊婦でも安全な種類を選びましょう。
⑦ 体を締め付けない服装・姿勢で過ごす
妊娠初期はお腹の膨らみが目立たなくても、服の締め付けが胃の圧迫感や吐き気を悪化させることがあります。
ウエストや胸元をゆったりさせたマタニティウェアやリラックスウェアに切り替えましょう。
姿勢も重要で、背中を丸めるよりも、背筋を軽く伸ばして深呼吸する姿勢の方が胃への負担が少なくなります。
椅子に座るときは背もたれにクッションを入れるなど、上半身を少し起こすようにすると楽になります。
また、睡眠時には横向き（シムス体位）で寝ると、胃の圧迫が軽減されやすくなります。
服装と姿勢の工夫だけでも、つわりによる不快感が大きく和らぐことがあります。
⑧ 我慢せず病院へ相談！点滴・薬で楽になる場合も
つわりがあまりにもひどく、水も飲めない・体重が減っている場合は、妊娠悪阻（にんしんおそ）の可能性があります。
この場合、自己判断せずに早めに婦人科・産婦人科を受診しましょう。
病院では点滴による水分・栄養補給や、吐き気を抑える薬（制吐剤）の処方など、症状を和らげる治療を受けられます。
「つわりだから我慢しなければ」と思う必要はありません。
正しい医療サポートを受けることで、母体にも赤ちゃんにも負担をかけずに過ごせるようになります。
つらい時は遠慮せずに医師へ相談し、必要に応じて休養を取りましょう。
症状別：つわりの軽減ポイント
つわりの症状は人それぞれで、吐き気が中心の人もいれば、食べないと気持ち悪くなる「食べづわり」の人もいます。
また、匂いに敏感になる「匂いづわり」や、水分が取れなくなるほど強いケースもあります。
ここでは、つわりのタイプごとに生活の工夫や軽減のコツを紹介します。
- 吐き気が強いときのコツ
- 食べづわり（空腹時に気持ち悪くなる）への対処法
- 匂いづわりのときの生活環境の工夫
- 水分が取れないときの危険サイン
それぞれの症状に合った対応をすることで、体への負担を減らし、少しずつ快適に過ごせるようになります。
吐き気が強いときのコツ
吐き気が強いときは、無理に食べようとせず、少量でも「口にできるもの」を見つけることが大切です。
冷たい食べ物や喉ごしの良いゼリー・果物などは比較的食べやすく、胃の刺激を和らげてくれます。
温かい料理や油っぽい食事、香辛料の強い食品は吐き気を誘発することがあるため避けましょう。
また、姿勢もポイントで、背中を丸めず軽く上体を起こした状態の方が胃への圧迫が少なくなります。
食後はすぐに横にならず、しばらく座って安静にすると消化がスムーズです。
どうしても食事がつらいときは、水分と糖分を少しずつ摂るだけでも構いません。
無理せず、自分の体調に合わせて少しずつ栄養を取ることを意識しましょう。
食べづわり（空腹時に気持ち悪くなる）への対処法
食べづわりは、空腹になると強い吐き気や不快感が出るタイプのつわりです。
この場合、空腹を避けることが最も重要です。
1日3食にこだわらず、2〜3時間おきにクラッカー・ナッツ・ドライフルーツ・おにぎりなどを少しずつ食べましょう。
胃が空っぽの時間を作らないようにすると、嘔吐反射が起きにくくなります。
寝起きが特に気持ち悪い場合は、枕元に軽食を置いて、起きる前に少し食べるのがおすすめです。
また、血糖値の急な変動も気分の悪化につながるため、糖分の多いお菓子よりもゆるやかにエネルギーになる食べ物を選びましょう。
食べることに罪悪感を持たず、体が求めるものを少しずつ取り入れることが大切です。
匂いづわりのときの生活環境の工夫
匂いづわりは、妊娠中に最も多く見られるタイプのひとつです。
調理中の香りや洗剤、香水、タバコのにおいなど、日常生活のさまざまな匂いが強く感じられ、吐き気や頭痛を引き起こします。
対策としては、まず換気をこまめに行い、空気を入れ替えることが基本です。
調理がつらい場合は、電子レンジで温めるだけの食事や冷たいメニューに切り替えましょう。
また、外出時にはマスクを着けることでにおいを遮断しやすくなります。
自分の好きな香り（レモン・ミント・ユーカリなど）をハンカチに少量つけておくのもおすすめです。
香りのストレスを減らすことで、気分の悪化を防ぎ、つわりが軽くなるケースもあります。
水分が取れないときの危険サイン
水分がまったく取れない状態が続く場合は、早めに医療機関へ相談が必要です。
つわりが重症化すると「妊娠悪阻（にんしんおそ）」と呼ばれ、脱水や電解質のバランスが崩れることがあります。
具体的な危険サインとしては、尿の回数が減る・尿の色が濃い・体重が急に減る・めまいや立ちくらみがある、などです。
このような症状が見られたら、点滴による水分補給や入院治療が必要になることもあります。
水やお茶が受けつけにくい場合は、氷を口に含む・ゼリー飲料・経口補水液などを少量ずつ摂取してみましょう。
無理をせず、早めの受診が母体と赤ちゃんを守る最善の対応です。
「少しおかしい」と感じた段階で、遠慮せず医師に相談してください。
つわり中でも食べやすいおすすめ食べ物
つわりの時期は食べ物の匂いや食感に敏感になり、普段は食べられるものでも受けつけなくなることがあります。
しかし、食事をまったく取らないとエネルギー不足になり、つわりがさらに悪化することも。
ここでは、つわり中でも比較的食べやすく、体に優しい食べ物をカテゴリー別に紹介します。
- 冷たいもの（ゼリー・果物・アイス）
- 炭水化物（おかゆ・そうめん・クラッカー）
- さっぱり系（レモン・梅干し・酢の物）
- 消化に良いタンパク質（豆腐・卵・ヨーグルト）
無理に栄養バランスを取ろうとせず、「食べられるものを少しずつ」が基本です。
冷たいもの（ゼリー・果物・アイス）
冷たい食べ物は、匂いや味の刺激が少なく、喉ごしが良いためつわり中でも食べやすい傾向があります。
ゼリーや果物（りんご・みかん・バナナなど）は消化も良く、水分補給にも役立ちます。
特にゼリー飲料は手軽に糖分と水分を摂取でき、吐き気がある時のエネルギー補給にも最適です。
アイスやシャーベットも口当たりが良く、気分転換に向いています。
ただし、食べ過ぎると体が冷えやすくなるため、少量をゆっくり食べるようにしましょう。
果物は冷凍しておくと、よりさっぱりと食べられ、喉の通りも良くなります。
体が受け入れやすい温度・食感のものを選ぶことがポイントです。
炭水化物（おかゆ・そうめん・クラッカー）
つわりの時期に炭水化物を少しずつ摂ることで、体にエネルギーを補給しやすくなります。
特に、おかゆやそうめんなどの消化の良い主食は胃に負担をかけず、食べやすい代表格です。
温かい食事がつらい場合は、冷やしそうめんや冷製うどんに変えると喉ごしが良くなります。
また、クラッカーや食パンなど、においの少ない軽い炭水化物は空腹時の吐き気対策にも効果的です。
少しずつ口に入れてゆっくり食べることで、胃のむかつきを軽減できます。
油分や味の濃い料理を避け、塩味程度の薄味にするのがポイントです。
体調の良いタイミングで、無理なくエネルギーを摂取しましょう。
さっぱり系（レモン・梅干し・酢の物）
さっぱりした酸味のある食べ物は、口の中をリフレッシュし、吐き気を和らげる効果があります。
レモン水やレモンスライス、梅干し、酢の物などは唾液の分泌を促し、気分を落ち着けてくれます。
特にレモンの香りにはリラックス効果もあり、匂いづわりの対策にもおすすめです。
ただし、胃酸が強く出やすい人は酸味の摂りすぎに注意し、少量をゆっくり取り入れるようにしましょう。
飲み物にレモンを絞る・サラダにお酢を少しかけるなど、簡単な工夫でも食欲が戻りやすくなります。
酸味を上手に活用して、無理なく食べられるタイミングを増やしていきましょう。
「酸っぱい＝悪い刺激」ではなく、「軽い刺激で食欲を助ける」働きがあるのです。
消化に良いタンパク質（豆腐・卵・ヨーグルト）
タンパク質は妊娠中に必要な栄養素ですが、つわりの時期は肉や魚が食べにくくなる人が多いです。
その場合は、豆腐・卵・ヨーグルトなど消化に良いタンパク源で補うのがおすすめです。
豆腐は冷やしても温めても食べやすく、胃にやさしいのが特徴です。
卵は半熟卵や茶碗蒸しなど、柔らかい形で摂取すると負担が少なくなります。
ヨーグルトは酸味が食欲を刺激し、腸内環境を整える効果も期待できます。
どれも少量から始めて、体が受け入れられる範囲で取り入れましょう。
無理にバランスを取ろうとせず、体が「これなら大丈夫」と感じる食品を優先することが重要です。
水も飲めないときは危険信号！
つわりがひどくて水も飲めない状態が続く場合は、体が危険なサインを出しています。
単なるつわりではなく、脱水や栄養不足が進行している可能性があり、放置すると母体にも赤ちゃんにも悪影響を及ぼすおそれがあります。
ここでは、重症つわり（妊娠悪阻）の特徴や脱水のサイン、病院での治療内容、そして医師に相談すべきタイミングについて詳しく解説します。
- 重症つわり（妊娠悪阻）の可能性
- 脱水症状のチェックポイント
- 病院で行う治療：点滴・吐き気止め・安静指導
- 医師に相談すべきタイミング
「つわりだから我慢するしかない」と思わず、早めに医師へ相談することが安全な妊娠生活を送るための第一歩です。
重症つわり（妊娠悪阻）の可能性
妊娠悪阻（にんしんおそ）とは、つわりの症状が極端に強く、日常生活に支障をきたす状態を指します。
食べ物どころか水も受けつけられず、吐き気や嘔吐が止まらない場合は、この状態に該当する可能性があります。
妊娠悪阻では、体重が急激に減少し（妊娠前より5％以上）、体の水分や電解質のバランスが崩れてしまいます。
放置すると、脱水症状や肝機能障害、腎機能の低下などを引き起こすこともあります。
また、母体の栄養状態が悪化すると、胎児の発育にも影響が出るおそれがあるため、早期対応が必要です。
「我慢すればそのうち治る」と考えず、症状が強いと感じたらすぐに婦人科・産婦人科を受診しましょう。
脱水症状のチェックポイント
水分が取れない状態が続くと、体は急速に脱水状態に陥ります。
以下のような症状が見られる場合は、脱水のサインとして注意が必要です。
- 尿の回数が減った・色が濃い
- 唇や舌が乾く、口の中がねばつく
- めまい・立ちくらみ・頭痛がある
- 体がだるく、力が入らない
- 体重が急に減っている
これらの症状が複数当てはまる場合は、すでに中度〜重度の脱水が進行している可能性があります。
水分が飲めないまま1〜2日以上経過している場合は、自己判断せずに必ず医療機関を受診しましょう。
脱水は気づかないうちに進行し、重症化すると入院治療が必要になることもあります。
病院で行う治療：点滴・吐き気止め・安静指導
病院では、つわりや脱水が重度の場合、点滴治療が行われます。
点滴にはブドウ糖・電解質・ビタミンなどが含まれ、失われた水分や栄養を補うことで体調を回復させます。
また、強い吐き気が続く場合は制吐剤（吐き気止め）を使用することもあります。
薬の種類は妊婦でも使用できる安全なものが選ばれるため、心配せずに医師に相談してください。
症状が重い場合は、数日間の入院や安静指導が行われることもあります。
点滴治療によって体が回復すると、少しずつ水分や食事が摂れるようになる人も多いです。
早めに受診することで、重症化を防ぎ、母体と胎児の安全を守ることができます。
医師に相談すべきタイミング
「いつ病院へ行くべきか分からない」という人も多いですが、以下のような状態が続く場合はすぐに受診しましょう。
- 24時間以上、水もほとんど飲めない
- 尿の回数が極端に少ない・色が濃い
- 体重が急に減少している
- めまいやふらつき、強いだるさがある
- 嘔吐が止まらず、眠れないほどつらい
これらはすべて妊娠悪阻の初期サインであり、放置すると症状がさらに悪化します。
病院では体調に応じて適切な治療や休養の指導を受けられるため、早期の相談が何よりも大切です。
「つわりは仕方ない」と我慢せず、母体と赤ちゃんの健康を守るために行動しましょう。
受診は決して大げさなことではありません。体のSOSを見逃さないようにしてください。
つわりを悪化させない生活習慣
つわりは完全に防ぐことはできませんが、生活習慣を整えることで症状を悪化させない工夫ができます。
日常の中でのちょっとした刺激やストレス、睡眠不足などが、吐き気や体調不良を強める要因になることもあります。
ここでは、つわりをできるだけ軽く保ち、心身を安定させるための生活習慣のポイントを紹介します。
- におい・温度・明るさなど刺激を減らす
- スマホや画面を見すぎない（乗り物酔いと同様の症状）
- 寝不足・ストレス・過労を避ける
- 家族や職場の理解を得る方法
環境と生活リズムを整えることで、つわりのつらさを少しでも和らげることができます。
におい・温度・明るさなど刺激を減らす
妊娠中は嗅覚・視覚・温度感覚が敏感になるため、ちょっとした刺激でも吐き気を感じやすくなります。
料理の匂いや洗剤、香水、タバコなどの刺激臭を避けるようにしましょう。
調理は換気扇を強めに回したり、冷たい料理や電子レンジ調理を活用するのがおすすめです。
また、部屋の温度が高いと空気がこもりやすく、匂いが強く感じられるため、こまめな換気や冷房の利用も効果的です。
蛍光灯の光が眩しく感じる場合は、間接照明や柔らかい明かりに切り替えると気分が落ち着きます。
五感への刺激をできるだけ減らすことで、つわりによる不快感を軽減しやすくなります。
スマホや画面を見すぎない（乗り物酔いと同様の症状）
つわり中はスマホやパソコンの画面を見ることで吐き気が悪化することがあります。
これは、乗り物酔いと同じ原理で、目から入る映像と体の感覚がズレることで三半規管が刺激されるためです。
長時間のスマホ操作や動画視聴は控え、こまめに目を休ませましょう。
画面を見るときは、明るさを下げ、姿勢を楽にして使用することがポイントです。
また、SNSやニュースなどで情報を見すぎると、精神的な不安が増して体調にも影響します。
「つわりの間はデジタルデトックス期間」と割り切って、できるだけ脳と目を休める時間を作りましょう。
寝不足・ストレス・過労を避ける
妊娠中はホルモンの影響で疲れやすく、体が休養を強く求める時期です。
寝不足やストレス、過労は自律神経を乱し、つわりを悪化させる原因になります。
仕事や家事を無理にこなそうとせず、「今日は休む」と決める勇気を持つことが大切です。
眠れないときは、寝る前に温かい飲み物（カフェインレス）を飲む、深呼吸をする、照明を落とすなどリラックス習慣を取り入れましょう。
また、ストレスを感じたときは、1人で抱え込まずに家族や医師に相談してください。
十分な睡眠と心の安定が、つわりを和らげる大きな助けになります。
家族や職場の理解を得る方法
つわりのつらさは見た目では分かりにくいため、周囲の理解とサポートが欠かせません。
家族には、「匂いがつらい」「料理ができない」など具体的に伝えることで、協力を得やすくなります。
パートナーが料理や買い物を代わってくれるだけでも、体への負担が大きく減ります。
また、職場では早めに上司や人事に妊娠を報告し、体調に合わせて勤務時間や業務内容を調整してもらいましょう。
無理をして働き続けることは、自分にもお腹の赤ちゃんにも負担になります。
「迷惑をかけたくない」と我慢せず、周囲に頼ることが母体を守る最善の方法です。
理解を得ながら、安心して過ごせる環境を整えることが、つわりを悪化させない鍵になります。
つわりがひどいときにおすすめのリラックス法
つわりがつらいときは、体だけでなく心のリラックスもとても大切です。
精神的な緊張やストレスはホルモンバランスを乱し、吐き気や倦怠感を悪化させることがあります。
ここでは、自宅で簡単にできて、妊婦さんの体に負担をかけずに気分を落ち着ける4つのリラックス法を紹介します。
- アロマ（柑橘・ペパーミント・ラベンダー）
- 深呼吸・瞑想・軽いストレッチ
- 入浴のタイミングと温度の工夫
- つわり日記をつけて症状を可視化する
無理に頑張らず、自分の心と体が「気持ちいい」と感じる時間を少しでも作ることが、回復への近道です。
アロマ（柑橘・ペパーミント・ラベンダー）
アロマの香りは、嗅覚を通して脳に働きかけ、緊張をほぐしてくれる自然のリラックス法です。
妊娠中でも比較的安全とされる香りには、柑橘系（オレンジ・レモン）やペパーミント、ラベンダーなどがあります。
柑橘系は爽やかで気分をリフレッシュさせ、ペパーミントは吐き気を和らげ、ラベンダーは安眠効果が期待できます。
ただし、香りが強すぎると逆に気分が悪くなる場合があるため、ティッシュやマスクに1滴垂らす程度が理想です。
部屋にディフューザーを使う場合は、短時間（15〜20分）で切るようにしましょう。
自分に合う香りを見つけて、つわりの不快感を少しでもやわらげるサポートにしてみてください。
深呼吸・瞑想・軽いストレッチ
つわり中は体の不調だけでなく、気分の落ち込みや不安感を抱える人も多くいます。
そんな時におすすめなのが、深呼吸・瞑想・軽いストレッチです。
深呼吸をゆっくり繰り返すことで自律神経が整い、吐き気や動悸が落ち着くことがあります。
また、5分程度の瞑想で「今の体調を受け入れる」意識を持つと、精神的な緊張がやわらぎます。
体調が許す範囲で、肩や首を軽く回す・足首を動かすなどのストレッチも効果的です。
動くことがつらい日は、呼吸だけでも十分。無理のない範囲でリラックス時間を作るようにしましょう。
「ゆっくり息を吐く」ことを意識するだけでも、心身のバランスが整いやすくなります。
入浴のタイミングと温度の工夫
つわりがあると「お風呂に入るのもつらい」と感じる人も多いですが、上手に入浴を取り入れることでリラックス効果を得られます。
ポイントは、熱すぎないぬるめのお湯（37〜39℃）に、10〜15分ほどゆっくり浸かることです。
お湯の温度が高すぎると心拍数が上がり、吐き気や立ちくらみを悪化させることがあります。
入浴前後にはコップ1杯の水を飲み、脱水を防ぐことも忘れずに。
体調が悪い日はシャワーだけでも構いません。無理をせず、心地よく感じる範囲で取り入れましょう。
入浴中にゆっくり呼吸を整えると、自律神経が落ち着き、眠りの質も向上します。
香りづけにバスソルトを使う場合は、妊娠中でも安全な成分（無添加・低刺激）を選びましょう。
つわり日記をつけて症状を可視化する
つわりのつらさは目に見えないため、自分でも変化に気づきにくいことがあります。
そんな時は、1日ごとの体調を記録する「つわり日記」をつけてみましょう。
「何を食べたら気持ち悪くなった」「どの時間帯がつらい」「何をしたら楽だった」などを書き出すことで、傾向が見えてきます。
自分に合う対処法を見つけやすくなり、つわりとの付き合い方が少しずつ分かるようになります。
また、医師の診察時に見せることで、症状を客観的に伝えやすくなるメリットもあります。
記録を通して「昨日より少し楽だった」と感じられるだけでも、心の支えになります。
完璧を目指さず、気が向いたときに書くくらいのペースで続けてみましょう。
つわりがいつまで続く？終わりのサイン
つわりは妊娠初期の代表的な症状ですが、「いつ終わるのか」が見えないと心身ともに辛く感じる人も多いでしょう。
個人差はありますが、つわりにはおおよその期間と「終わりのサイン」があります。
ここでは、つわりが落ち着く時期や回復の兆し、そして長引く場合に注意したいポイントを解説します。
- 多くは妊娠12〜16週で落ち着く
- 急に食欲が戻る・体調が安定してくるサイン
- つわりが長引く人の特徴と注意点
終わりの兆候を知っておくことで、心に余裕を持ってつわりの時期を乗り越えられるようになります。
多くは妊娠12〜16週で落ち着く
つわりのピークは妊娠8〜11週ごろに現れ、その後、妊娠12〜16週（妊娠4か月）に入ると徐々に落ち着いてくる人が多いです。
これは、胎盤が完成し、ホルモン分泌が安定してくる時期にあたるためです。
胎盤が母体に代わってホルモンを分泌するようになると、急激なホルモン変化が少なくなり、体が順応していきます。
完全につわりが消えるまでには個人差がありますが、多くの妊婦さんはこの頃から食欲や体力が少しずつ戻ってきます。
中には妊娠20週頃まで続く人もいますが、それも異常ではありません。
体調が安定してきたら、少しずつ外出や食事のバリエーションを増やすなど、生活リズムを整えていきましょう。
急に食欲が戻る・体調が安定してくるサイン
つわりの終わりが近づくと、まず現れるのが「急に食べられるようになる」という変化です。
今まで受けつけなかった食べ物が食べられるようになったり、空腹を感じるようになったりするのが特徴です。
また、「朝起きても気持ち悪くない」「匂いが気にならなくなった」「体が軽く感じる」といった体調の安定もサインの一つです。
このような変化が見られたら、つわりがピークを過ぎ、回復に向かっている可能性が高いです。
ただし、急に食べ過ぎると胃が驚いて吐き気が戻ることもあるため、最初は少量ずつ食事を増やしていきましょう。
「昨日より少し楽かも」と感じる日が増えていけば、つわりの終わりが近い証拠です。
焦らず、自分のペースで回復を実感していきましょう。
つわりが長引く人の特徴と注意点
つわりが妊娠後期まで続く人もいますが、その多くは体質やホルモンの影響によるものです。
特に、妊娠前から胃腸が弱い人や、ストレスを感じやすい人、双子など多胎妊娠の人はつわりが長引く傾向があります。
また、体調の波が激しいと、つわりが良くなったり悪くなったりを繰り返すこともあります。
長引く場合でも、体重が減りすぎず、水分が取れていれば大きな問題はありません。
しかし、水分が取れない・体重が急に減少している場合は妊娠悪阻（にんしんおそ）の可能性もあるため、早めに受診を。
「いつまで続くんだろう」と不安に感じるときこそ、周囲のサポートを頼り、無理をしないことが大切です。
つわりは必ず終わりが来るもの。焦らずに体の回復を見守りましょう。
よくある質問（FAQ）
Q1. つわりで水も飲めないときはどうする？
水が飲めない状態が続く場合は、脱水のリスクがあるため無理せず医療機関を受診しましょう。
氷を口に含む、ゼリー飲料や経口補水液を少しずつ摂るなど、こまめな水分補給を試してください。
冷たい飲み物や果汁を混ぜた水は喉ごしが良く、受け入れやすいことがあります。
それでも吐いてしまう、尿が減っている、体重が減っている場合は妊娠悪阻（にんしんおそ）の可能性があるため、点滴治療が必要です。
「我慢すれば治る」と思わず、早めに婦人科へ相談しましょう。
Q2. 吐き気止めの薬は妊娠中でも大丈夫？
医師の処方による吐き気止め（制吐剤）は、妊娠中でも安全に使用できる薬が存在します。
特に、ビタミンB6やドンペリドンなどは妊婦にも比較的安全とされ、国内外で使用されています。
市販薬を自己判断で使うのは避け、必ず医師に相談してから服用してください。
点滴で吐き気を抑える治療もあるため、症状がつらい場合は無理をせず受診しましょう。
正しい医療サポートを受けることで、つわりを安全に和らげることができます。
Q3. つわりは性別によって違う？
つわりの重さと赤ちゃんの性別には医学的な因果関係はありません。
「女の子だとつわりが重い」「男の子だと軽い」といった説は、あくまで個人の体験談です。
つわりの強さはホルモンバランスや体質、ストレス、生活環境などによって変化します。
妊娠ごとに症状が異なるのも自然なことで、性別による違いではないとされています。
性別を気にしすぎず、自分の体調と向き合うことを大切にしましょう。
Q4. 病院ではどんな治療をしてくれる？
つわりが重度の場合、病院では点滴治療や制吐剤の投与が行われます。
点滴には電解質やブドウ糖が含まれ、脱水や栄養不足を改善します。
症状によっては入院し、安静を保ちながら水分・栄養を補給することもあります。
必要に応じて血液検査や尿検査で脱水の度合いを確認します。
早期に医療介入を受けることで、体調が安定しやすくなり、赤ちゃんにも良い影響があります。
Q5. 仕事を続けるのがつらいときの対応は？
妊娠中は体調が日によって変化するため、無理をせず休むことが最も重要です。
会社に妊娠を報告し、勤務時間の短縮や在宅勤務など柔軟な対応を相談しましょう。
医師から診断書をもらえば、母性健康管理措置として勤務の軽減が可能です。
周囲に迷惑をかけたくないと思う気持ちは自然ですが、健康を優先することが結果的に最善の選択です。
必要であれば産休前に休職や有給を活用することも検討しましょう。
Q6. つわりが急に軽くなったけど大丈夫？
つわりが急に軽くなったからといって異常とは限りません。
多くの場合、ホルモンバランスの変化によって自然に症状が落ち着くタイミングが訪れます。
特に妊娠12〜16週頃に入ると、胎盤が完成してホルモンが安定するため、体調が改善しやすくなります。
ただし、出血・腹痛・発熱など他の症状を伴う場合は、念のため受診してください。
体調の変化を感じたら、無理をせず医師に相談し、安心して過ごせるようにしましょう。
Q7. 家族やパートナーにどうサポートしてもらう？
つわりのつらさは見た目では分かりにくいため、具体的に助けてほしいことを伝えることが大切です。
「料理の匂いがつらい」「買い物に行ってほしい」「洗い物をお願いしたい」など、具体的に伝えると協力してもらいやすくなります。
パートナーには、「支えてもらえるだけで安心する」と気持ちを伝えることも大切です。
また、家族がつわりの知識を理解してくれると、サポートの質がぐっと上がります。
協力体制を築くことで、心にも余裕が生まれ、つわり期間を乗り越えやすくなります。
まとめ：つわりは我慢しないで、少しでも楽に過ごそう
つわりは多くの妊婦さんが経験する自然な現象ですが、我慢しすぎると心身の負担が大きくなります。
水分や食事が取れないときは、早めに医師へ相談することが母体と赤ちゃんの安全につながります。
また、「無理をしない」「休む勇気を持つ」「頼ることを恐れない」ことも大切なセルフケアです。
つわりは永遠に続くものではなく、必ず終わりが訪れます。
自分を責めず、少しでも楽に過ごせる方法を取り入れながら、穏やかな妊娠生活を目指しましょう。
