妊娠初期の生理痛のような腹痛はなぜ?原因と対処法を解説

妊娠が判明したばかりの時期は、喜びと同時に不安も多くなるものです。特に「生理痛のような腹痛」を感じると、「何か問題が起きているのでは?」と心配になる方も少なくありません。しかし、妊娠初期の腹痛は多くの妊婦さんが経験する一般的な症状であり、そのほとんどは妊娠による生理的な変化が原因です。

この時期の腹痛は、体の準備が始まるサインであることが多いですが、中には注意が必要なケースも存在します。この記事では、妊娠初期に生理痛のような腹痛が起こる原因や、心配のないケースと医師の診察が必要なケースの見分け方、具体的な対処法について詳しく解説します。この記事を読んで、ご自身の体の変化を理解し、安心して妊娠初期を過ごすための一助としてください。

妊娠初期の腹痛はなぜ起こる?

妊娠初期に感じる生理痛のような腹痛は、様々な原因によって引き起こされます。多くは妊娠に伴う生理的な変化によるものであり、心配いらないケースがほとんどです。しかし、中には注意が必要な症状もあるため、ご自身の体と向き合い、適切な判断ができるよう、まずは主な原因について理解を深めましょう。

子宮の拡大による腹痛

妊娠が成立すると、赤ちゃんを育むために子宮は少しずつ大きくなっていきます。特に妊娠初期は、子宮が骨盤内で急激に成長するため、子宮を支える靭帯や周りの筋肉が引っ張られ、刺激されることで腹痛を感じることがあります。

この痛みは、生理痛に似た鈍い痛みや、下腹部がチクチク、ズキズキするような痛みとして感じられることが多いです。特定の動作(立ち上がる、くしゃみをする、体をひねるなど)で一時的に強まることもあります。これは、子宮を支える円靭帯が急に伸びることで起こる「円索靭帯痛」と呼ばれるもので、多くの妊婦さんが経験する生理的な痛みです。

子宮の拡大による腹痛は、一般的に以下のような特徴があります。
- 痛みが軽度で、一時的なものが多い
- 横になって安静にしたり、体を温めたりすると和らぐことがある
- 出血を伴わないか、ごく少量の出血のみ

このような痛みは、妊娠が進むにつれて自然に収まっていくことが多いです。体を休め、無理のない範囲で日常生活を送ることが大切です。

着床痛による腹痛

着床痛とは、受精卵が子宮内膜に着床する際に起こるとされる、ごく軽度で一時的な腹痛のことです。すべての女性が経験するわけではなく、また痛みの感じ方にも個人差が大きいとされています。

着床痛は、生理予定日の数日前から生理予定日頃にかけて現れることが多く、以下のような特徴があります。
- チクチクとした軽い痛み、または下腹部に違和感がある程度
- 痛みが数時間から1日程度で収まる短期間のもの
- ごく少量の出血(着床出血)を伴うことがある(茶色やピンク色で、生理の始まりとは異なる)

着床痛は、妊娠が成立したことを示唆するサインの一つとされていますが、そのメカニズムは完全に解明されているわけではありません。もし生理予定日頃にこのような症状があり、その後に妊娠が判明した場合は、着床痛であった可能性が高いでしょう。

便秘や下痢による腹痛

妊娠中は、ホルモンバランスの変化によって腸の動きが鈍くなるため、便秘になりやすくなります。特に「プロゲステロン」というホルモンは、子宮を安定させる働きがありますが、同時に腸の蠕動運動を抑制する作用も持っています。これにより、便が腸内に滞留しやすくなり、便秘による腹痛や腹部の張りを感じることがあります。

また、つわりによる食生活の変化や、水分摂取量の不足も便秘を悪化させる原因となります。逆に、つわりの吐き気で消化不良を起こしたり、特定の食品が合わなかったりして下痢を引き起こすこともあります。便秘や下痢による腹痛は、以下のような特徴があります。
- お腹が張る感じや、差し込むような痛み
- 排便後に痛みが和らぐことが多い
- 便の硬さや排便回数に変化がある

妊娠中の便秘や下痢を和らげるためには、以下の対策が有効です。
- **水分補給:** こまめに水分を摂りましょう。特に白湯は体を温め、腸の動きを助けます。
- **食物繊維の摂取:** 野菜、果物、海藻類、きのこ類など、食物繊維が豊富な食品を積極的に摂りましょう。
- **軽い運動:** 無理のない範囲で散歩などの軽い運動をすることで、腸の動きが活発になります。
- **規則正しい生活:** 規則的な食事と睡眠を心がけ、排便習慣を整えましょう。
- **食事内容の見直し:** つわりの時期は無理せず食べられるものを優先しつつ、少しずつバランスの取れた食事を意識しましょう。

もし便秘や下痢がひどく、生活に支障が出るようであれば、かかりつけの産婦人科医に相談し、妊婦さんでも服用できる薬を処方してもらうことも可能です。自己判断で市販薬を使用するのは避けましょう。

左側のみの腹痛は大丈夫?

妊娠初期に感じる腹痛が、右側ではなく左側だけに集中している場合、「大丈夫だろうか」と不安に感じる方もいるかもしれません。多くの場合、片側だけの腹痛も子宮の拡大に伴う生理的な変化が原因です。

特に、子宮を支える靭帯の一つである「円索靭帯(えんさくじんたい)」が伸びたり引っ張られたりする際に、片側だけに痛みを感じることがあります。これは「円索靭帯痛」と呼ばれ、左右どちらかにチクチク、ズキズキとした痛みや、引っ張られるような痛みを感じることが特徴です。特定の体勢を取った時や、咳やくしゃみをした時に一時的に痛みが増すこともあります。

しかし、片側だけの腹痛の場合、生理的なもの以外の原因も考えられるため、注意が必要です。

注意が必要なケース:

症状 可能性のある疾患 受診の目安
強い痛み、持続する痛み、吐き気や嘔吐、肩の痛み、肛門痛を伴う 子宮外妊娠(異所性妊娠) ただちに医療機関を受診してください。 出血を伴うこともあります。
激しい下腹部痛、吐き気や嘔吐、発熱、不正出血 卵巣嚢腫茎捻転、卵巣出血 ただちに医療機関を受診してください。
右下腹部に移動する痛み、発熱、吐き気 虫垂炎(盲腸) 症状が進行する前に医療機関を受診してください。
排尿時の痛み、頻尿、残尿感、発熱 尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など) 感染が悪化する前に医療機関を受診してください。

もし左側(または右側)の腹痛が、上記の「可能性のある疾患」に挙げられるような特徴的な症状を伴う場合や、痛みがどんどん強くなる、安静にしても和らがない、といった場合は、すぐに医療機関を受診することが非常に重要です。自己判断は避け、必ず医師の診察を受けましょう。

妊娠初期の腹痛と生理痛の見分け方

妊娠を希望している女性にとって、生理痛のような腹痛は「生理が来るサインなのか、それとも妊娠の兆候なのか」を見分けるのが難しいと感じることがよくあります。ここでは、妊娠初期の腹痛と生理痛を見分けるためのポイントをいくつかご紹介します。ただし、これらの情報はあくまで目安であり、最終的な判断は医療機関での診察によって行われることを覚えておきましょう。

痛む場所の違い

項目 妊娠初期の腹痛 生理痛
主な場所 - 下腹部全体、子宮の周り - 下腹部全体
- チクチク、ズキズキといったピンポイントな痛みを感じることもある - 腰やお尻、太ももの内側まで広がることもある
特徴 - 子宮の拡大や着床に伴うもので、特定の場所が引っ張られるような感覚があることも - 子宮の収縮による痛みで、内臓全体が痛むような感覚が強い傾向にある

妊娠初期の腹痛は、子宮が成長する過程で周りの組織が引っ張られる感覚や、着床によるごく軽微な刺激からくることが多いです。そのため、下腹部の特定の位置にチクチクとした痛みを感じることもあれば、下腹部全体に鈍い痛みを感じることもあります。
一方、生理痛は子宮の収縮によって起こるため、下腹部全体に重苦しい痛みや締め付けられるような痛みが広がり、腰や太ももの内側まで痛みが響くことも珍しくありません。

痛みの種類

項目 妊娠初期の腹痛 生理痛
痛みの性質 - チクチク、ズキズキ、または軽い鈍痛 - 締め付けられるような痛み、重苦しい痛み、ズキズキとした痛み
- 一時的で、持続性が低いことが多い - 数時間から数日間持続し、周期的に強弱を繰り返すことがある
その他症状 - つわり(吐き気、嘔吐)、乳房の張り、眠気、頻尿、倦怠感などが同時に現れることが多い - 頭痛、吐き気、だるさ、イライラなど(PMS/PMDDの症状)が同時に現れることもある

妊娠初期の腹痛は、一般的に生理痛ほどの強い痛みではないことが多いです。チクチクとした軽い痛みや、下腹部に違和感がある程度で、短時間で収まることが多いでしょう。痛みの強さや持続性には個人差がありますが、日常生活に支障をきたすほどの激痛であることは稀です。

生理痛の場合は、子宮が経血を排出するために強く収縮するため、人によっては鎮痛剤が必要なほどの強い痛みを伴います。また、痛みが数時間から数日間続き、痛みの波があることが特徴です。

さらに、腹痛以外の症状にも注目しましょう。妊娠初期であれば、つわり(吐き気や嘔吐)、乳房の張り、眠気、倦怠感、頻尿などの「妊娠初期症状」が同時に現れることがあります。これらの症状は生理前症候群(PMS)と似ていることもありますが、総合的に判断することが大切です。

出血の有無

腹痛に加えて出血がある場合は、その出血の性状(色、量、期間)が妊娠初期の腹痛と生理痛を見分ける重要な手がかりとなります。

項目 妊娠初期の出血(心配のないケース) 生理出血
- ピンク色、茶色、またはごく薄い赤色 - 鮮やかな赤色から暗赤色
- ごく少量(下着にわずかに付着する程度、拭くとわかる程度) - 比較的多く、ナプキンが必要な量
期間 - 数時間から1~2日程度で終わる短い期間 - 3~7日程度の期間、持続的に続く
塊の有無 - ほとんどないか、ごく小さな繊維状のものがある程度 - レバー状の塊や粘膜状の塊が混じることもある
タイミング - 生理予定日頃が多い(着床出血) - 生理周期に合わせて規則的に起こる

妊娠初期の出血で注意すべきケース(すぐに受診を!)

症状 可能性のある疾患
- 鮮血の出血量が徐々に増える、または生理中より多い 切迫流産、進行流産、子宮外妊娠
- レバー状の塊や組織片が混じる 流産
- 腹痛と同時に激しい腹痛(特に片側)や肩の痛み、意識が遠のくなどの症状 子宮外妊娠、流産

妊娠初期の少量の出血は「着床出血」である可能性が高く、多くの場合は心配いりません。しかし、出血の色が鮮血であったり、量が生理並みまたはそれ以上であったり、レバー状の塊が混じる場合は、流産や子宮外妊娠などの可能性も否定できません。このような出血と同時に強い腹痛がある場合は、迷わずすぐに医療機関を受診してください。

妊娠初期の腹痛で受診すべきケース

妊娠初期の腹痛は多くの妊婦さんが経験する生理的なものが多いですが、中には医療機関での診察が不可欠な「危険なサイン」であることもあります。ご自身の体からのSOSを見逃さないためにも、どのような症状が出た場合に受診すべきかを正しく理解しておくことが重要です。

強い腹痛や持続する痛み

妊娠初期の腹痛は、一般的に軽度で一時的なものが多いですが、以下のような特徴の痛みがある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

  • 痛みがどんどん強くなる場合: 最初は軽い痛みでも、時間の経過とともに痛みが悪化し、日常生活を送るのが困難になるほど強くなる場合は危険な兆候です。
  • 痛みが持続する場合: 安静にしたり、体を温めたりしても痛みがまったく改善せず、数時間以上続く場合は注意が必要です。特に、夜間や休日であってもためらわずに受診を検討しましょう。
  • 激しい痛み: 経験したことのないような激しい腹痛や、冷や汗が出るほどの痛み、意識が遠のくようなめまいを伴う場合は、緊急性の高い状態である可能性があります。
  • ロキソニンなど市販薬でも収まらない痛み: 妊娠中の市販薬服用は控えるべきですが、もし誤って服用したとしても痛みがまったく改善しない場合は、重篤な原因が隠れている可能性があります。

これらの強い腹痛や持続する痛みは、切迫流産、進行流産、子宮外妊娠(異所性妊娠)、卵巣嚢腫茎捻転といった、迅速な処置が必要な疾患のサインである可能性があります。

出血を伴う腹痛

腹痛に加えて出血がある場合は、その出血の性状をよく確認し、以下のような場合はすぐに医療機関を受診してください。

  • 鮮血の出血: 生理のような鮮やかな赤色の出血がある場合。
  • 出血量が多い場合: ナプキンが必要な量や、生理の時よりも量が多いと感じる場合。
  • レバー状の塊や組織片が混じる: 出血の中に血の塊や、組織のようなものが見られる場合。
  • 腹痛とともに出血量が増える: 痛みが強くなるにつれて出血量も増える場合。

妊娠初期の少量の茶色やピンク色の出血(着床出血や切迫流産によるごく軽微な出血)は、経過観察となることもありますが、鮮血で量が多い出血は、流産が進行している可能性や、子宮外妊娠などの緊急性の高い状態を示唆していることがあります。特に、激しい腹痛とともに出血がある場合は、緊急性が高いため、ためらわずに救急外来を受診しましょう。

その他気になる症状がある場合

腹痛や出血以外にも、妊娠初期に以下のような症状を伴う場合は、早めに医療機関を受診してください。

  • 発熱: 腹痛とともに高熱が出る場合は、感染症(尿路感染症、絨毛膜羊膜炎など)や虫垂炎などの可能性も考えられます。
  • 激しい吐き気や嘔吐(つわりとは異なる場合): いつものつわりとは違う、突然の激しい吐き気や嘔吐、胃の痛みがある場合は、他の病気である可能性も考慮されます。
  • 肩の痛みや肛門痛: 子宮外妊娠の症状として、出血や腹痛に加えて肩の痛みや肛門付近の痛みを訴えることがあります。これは腹腔内出血が横隔膜を刺激することで起こると考えられています。
  • めまいや立ちくらみ: 大量の出血や貧血が原因で、めまいや立ちくらみが起こることがあります。意識が朦朧とする場合は、重篤な状態である可能性が高いです。
  • 排尿時の痛み、頻尿、残尿感: 膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症の可能性があります。妊娠中は体がデリケートになっているため、感染症にかかりやすくなります。
  • 不安な気持ちが強い場合: 上記のような具体的な症状がなくても、ご自身の不安な気持ちが強く、精神的に落ち着かない場合は、遠慮なく医療機関を受診し、医師に相談しましょう。心身のストレスは妊娠に悪影響を及ぼす可能性もあります。

これらの症状は、妊娠の継続に影響を与える可能性のある重要なサインです。自己判断せずに、必ず医療機関で適切な診断と処置を受けるようにしてください。受診する際は、いつから、どのような症状があり、どのくらい続いているかなどを具体的に伝えられるよう準備しておくとスムーズです。

【専門家監修】妊娠初期の腹痛についてのQ&A

妊娠初期の生理痛のような腹痛について、よくある疑問に専門家監修の視点からお答えします。多くの妊婦さんが抱える不安を解消し、安心して妊娠期間を過ごせるよう、正しい知識を身につけましょう。

Q.妊娠初期に生理痛のような腹痛はよくある症状ですか?

A.はい、妊娠初期に生理痛のような腹痛を感じることは非常に多くの妊婦さんが経験する、ごく一般的な症状です。

妊娠が成立すると、子宮は赤ちゃんを育むために少しずつ大きくなり始めます。この子宮の成長に伴い、子宮を支える靭帯(円索靭帯など)や周囲の筋肉が引っ張られたり、刺激されたりすることで、下腹部にチクチク、ズキズキとした痛みや、生理痛に似た鈍い痛みを感じることがあります。また、受精卵が子宮内膜に着床する際に起こる「着床痛」も、生理予定日頃に軽い腹痛として感じられることがあります。

これらの痛みは、ほとんどが妊娠による生理的な変化であり、赤ちゃんやお母さんの体に問題があるわけではありません。体が新しい状態に適応しようとする自然な反応と捉えることができます。しかし、痛みの感じ方や頻度には個人差が大きいため、過度に心配しすぎないことが大切です。

Q.妊娠初期の腹痛と生理痛はどう見分ける?

A.妊娠初期の腹痛と生理痛を見分けるには、痛みの性質や伴う症状、出血の有無などを総合的に判断する必要があります。

特徴 妊娠初期の腹痛 生理痛
痛みの性質 - チクチク、ズキズキ、引っ張られるような軽い鈍痛 - 締め付けられるような痛み、重苦しい鈍痛
- 一時的で持続しないことが多い - 継続的で、周期的に強弱があることが多い
痛みの場所 - 下腹部全体または特定の部位(子宮周り、靭帯の引っ張りなど) - 下腹部全体、腰、太ももなどに広がる
出血の有無 - 着床出血: ごく少量、ピンク色〜茶色、数日で終わる。鮮血は注意。 - 生理出血:鮮血、量が比較的多く、数日間続く。
その他の症状 - つわり(吐き気、嘔吐)、乳房の張り、眠気、頻尿、倦怠感などが同時に現れることが多い - 頭痛、だるさ、イライラ、むくみなど(PMS症状)が同時に現れることもある

最も重要なのは、「いつもと違う」と感じるかどうかです。特に、生理予定日を過ぎても生理が来ず、上記のような妊娠初期の腹痛や他の妊娠兆候がある場合は、妊娠の可能性を疑い、妊娠検査薬を使用したり、医療機関を受診したりすることをおすすめします。ただし、自己判断は難しいため、不安な場合は早めに産婦人科を受診し、医師の診断を仰ぐことが最も確実です。

Q.初期流産はどんな痛みですか?

A.初期流産に伴う腹痛は、個人差が大きいものの、一般的に「生理痛よりも強く、下腹部全体に広がる締め付けられるような痛み」として感じられることが多いです。

流産の進行度合いによって痛みの種類や強さは異なりますが、典型的な初期流産の痛みは以下のような特徴があります。

  • 痛みの種類: 生理痛の最も強い時期に感じるような、子宮がぎゅーっと締め付けられるような痛みや、重苦しい鈍痛、ズキズキとした痛みが持続します。
  • 痛みの強さ: 痛みが徐々に強くなり、我慢できないほどの激痛になることもあります。
  • 痛む場所: 下腹部全体に広がり、腰にも響くことがあります。
  • 出血を伴う: ほとんどの場合、腹痛と同時に出血を伴います。出血は鮮血であることが多く、量も生理の時よりも多いと感じることがあります。レバー状の塊や、組織のようなものが混じることもあります。
  • その他の症状: めまい、吐き気、冷や汗、意識が遠のくなどの症状を伴うこともあり、これは出血量が多い場合に特に見られます。

もし、上記のような強い腹痛と出血がある場合は、ただちに医療機関を受診してください。 夜間や休日であっても、救急外来を受診することが重要です。流産は誰にでも起こりうることであり、決してご自身のせいではありません。適切な医療的処置を受けることで、母体の安全を確保することが最優先です。

Q.妊娠していても生理痛のような痛みがあるのはなぜ?

A.妊娠しているにもかかわらず生理痛のような痛みを感じるのは、主に以下のような妊娠に伴う生理的な変化が原因です。体が新しい命を育む準備を進める過程で起こる自然な現象であり、多くの場合、心配はいりません。

  1. 子宮の拡大と靭帯の引っ張り: 妊娠が成立すると、子宮は赤ちゃんのために急激に大きくなり始めます。この時、子宮を支える骨盤内の靭帯(特に円索靭帯)や周囲の筋肉が引っ張られ、伸びることで刺激が生じ、生理痛に似た鈍い痛みや、チクチクとした痛みを感じることがあります。これは「円索靭帯痛」とも呼ばれ、特定の姿勢や動きで一時的に強まることもあります。
  2. 血流の増加: 妊娠すると子宮や骨盤内への血流量が増加します。これにより、子宮が充血し、軽い痛みや重だるさを感じることがあります。
  3. ホルモンの影響: 妊娠を維持するために分泌される「プロゲステロン(黄体ホルモン)」は、子宮の収縮を抑える働きがありますが、同時に腸の動きを鈍らせ、便秘を引き起こしやすくなります。便秘による腹部の張りや痛みを生理痛と間違えることもあります。また、プロゲステロンは体の様々な組織に影響を与えるため、感覚の変化として腹痛を感じることもあります。
  4. 着床時の刺激: 受精卵が子宮内膜に着床する際に、ごく軽い痛みや違和感(着床痛)を感じることがあります。これは生理予定日頃に起こるため、生理の兆候と勘違いしやすいです。

これらの痛みは、体が妊娠という新しい状態に適応しようと頑張っている証拠でもあります。通常は軽度で一時的なものがほとんどですが、痛みが強くなる、持続する、出血を伴う、といった場合は、上述の「受診すべきケース」を参考に、速やかに医療機関を受診してください。

まとめ|妊娠初期の腹痛は専門家へ相談を

妊娠初期に感じる生理痛のような腹痛は、多くの妊婦さんが経験するごく一般的な症状であり、そのほとんどが子宮の拡大やホルモンバランスの変化といった生理的な原因によるものです。着床痛や便秘による腹痛も、この時期によく見られる症状として挙げられます。左側だけの痛みも、多くは子宮を支える靭帯の引っ張りが原因であり、過度な心配は不要なケースが多いでしょう。

しかし、腹痛の性状によっては、切迫流産、子宮外妊娠、卵巣嚢腫茎捻転といった、迅速な対応が必要な病気が隠されている可能性もゼロではありません。特に、以下のような症状が見られる場合は、迷わずすぐに医療機関を受診してください。

  • 痛みがどんどん強くなる、または我慢できないほどの激しい痛み
  • 痛みが安静にしても改善せず、長時間持続する
  • 鮮血の出血があり、量が多い、またはレバー状の塊が混じる
  • めまい、立ちくらみ、肩の痛み、肛門痛、発熱などの他の症状を伴う

妊娠初期は、赤ちゃんも母体もデリケートな時期です。不安な気持ちを一人で抱え込まず、少しでも気になる症状があれば、かかりつけの産婦人科医や地域の医療機関に相談しましょう。専門家のアドバイスを受けることで、不要な心配から解放され、安心してマタニティライフを送ることができます。ご自身の体と心の声に耳を傾け、大切に過ごしてください。

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