性感染症(STI: Sexually Transmitted Infection)は性的接触を介して感染する疾患の総称で、クラミジア・淋病・梅毒・性器ヘルペス・HPV・HIV・カンジダなど30種類以上が知られています。WHO(世界保健機関)の推計では、世界で毎日100万件以上の新規感染が発生しているとされ、日本国内でも梅毒の報告数がこの10年で約14倍に急増するなど、若年層を中心に深刻な問題となっています。
性感染症の最大の課題は「無症状のまま進行するケースが多い」という点です。特に女性においては、クラミジアの約70〜80%、淋病の約50〜80%が初期に自覚症状を示さないとされています。症状がないまま感染が放置されると、骨盤内炎症性疾患(PID)を引き起こし、将来的な不妊や子宮外妊娠のリスクが高まります。
このページでは、検査の受け方・費用から主な疾患の症状、HPVワクチンによる予防まで、性感染症に関する知識を体系的に整理しています。
1. 性感染症の検査|どこで・いくらで受けられるか
「性感染症の検査を受けたいが、どこに行けばいいかわからない」という声は非常に多く聞かれます。検査を受けられる場所と特徴は以下の通りです。
保健所・検査所は無料・匿名で検査を受けられる最もハードルの低い選択肢です。ただし、検査できる項目はHIV・梅毒が中心で、実施日時が限られます。婦人科・泌尿器科・性病科では幅広い項目を一度に検査でき、陽性の場合はそのまま治療に移行できるメリットがあります。費用は保険適用の場合3,000〜5,000円程度、自費の場合5,000〜15,000円程度です。
郵送検査キットは自宅で検体を採取して郵送するタイプで、誰にも会わずに検査できるのが利点です。結果はオンラインで確認でき、陽性の場合は提携医療機関で治療を受けられます。精度は医療機関と同等の水準ですが、採取ミスによる再検査のリスクがある点は留意が必要です。
検査のタイミングも重要です。感染直後は体内でまだ抗体や菌量が検出レベルに達していないため、感染機会から潜伏期間を考慮した適切な時期に検査を受ける必要があります。
2. 主な性感染症の症状(女性)
女性に多い性感染症の初期症状と潜伏期間を疾患別に解説します。おりものの変化・不正出血・排尿時の違和感・下腹部痛など、見逃しやすいサインを知ることが早期発見につながります。
クラミジアは最も報告数が多い性感染症で、潜伏期間は1〜3週間です。女性では無症状が多いですが、水っぽいおりものの増加・不正出血・性交時の軽い痛みなどが初期サインです。未治療のまま放置すると子宮頸管炎→子宮内膜炎→卵管炎と上行感染し、骨盤内炎症性疾患(PID)に進展する可能性があります。
淋病は潜伏期間2〜7日と比較的早く症状が出やすい一方、女性の約半数以上は無症状です。黄色〜黄緑色の膿性おりもの、排尿時の灼熱感が特徴的ですが、咽頭(のど)への感染は症状がほぼ出ないため、検査しなければ気づけません。
カンジダは厳密にはSTIではなく、膣内の常在菌であるカンジダ菌が過剰増殖して起こる膣炎です。抗菌薬の服用後・免疫低下時・妊娠中などに発症しやすく、激しいかゆみと白いカッテージチーズ状のおりものが特徴です。再発を繰り返す場合は背景疾患の検索が必要です。
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HPV(ヒトパピローマウイルス)は性的接触を介して感染するウイルスで、性交経験のある女性の約80%が生涯で一度は感染するとされるほど一般的なウイルスです。HPVには200以上の型がありますが、そのうち約15種類が「高リスク型」として子宮頸がんの発症に関与しています。特にHPV 16型・18型は子宮頸がんの約65〜70%に関連しています。
HPV感染から子宮頸がんの発症までは通常10〜20年以上かかるため、定期的な子宮頸がん検診(細胞診・HPV検査)で前がん段階の異形成を早期発見すれば、子宮を温存した治療が可能です。日本では20歳以上の女性に対して2年に1回の子宮頸がん検診が推奨されていますが、実際の受診率は約40%にとどまっており、先進国の中でも低い水準です。
HPVワクチンは、感染前に接種することでHPV 16型・18型を含む複数の型への感染を予防します。2023年4月からは9価ワクチン(シルガード9)が定期接種の対象となり、HPV関連がんの約90%を予防できるとされています。性交経験前の接種が最も効果的ですが、すでに感染している型以外の型に対しては経験後でも予防効果があります。